でも、私は弟と違って公文に行ってないし、学習教材も買い与えられていないから、勉強する習慣もついてなくて。成績が下がるにつれて不安になっていったし、「自分はダメな人間なんだ」という思いも強くなってしまって。
それで、ある日突然、もう学校に行きたくない、と思ってしまったんです。
学校に行けない自分を「落ちこぼれ」「恥ずかしい」と思っていた
――どこかのタイミングで「学校に行こう」と思うことは。
糸井 その気力はなかったです。学校に行けなくなった自分を「落ちこぼれ」「恥ずかしい」と思っていたし、周りからも「あの子は学校に来てない、変わった子」という目で見られると思って。久しぶりに学校に行ったら、同級生からいじめられるかもしれない、という怖さも感じていました。
いじめられないとしても、「無視をされるんじゃないか」という被害妄想があって。親しい友達がいなかったので、劣等感や疎外感を抱きながら過ごすことになるんじゃないかと。
――一度行かなくなったら、行くのが怖くなりますよね。
糸井 しばらく行かないと、さらに学力もついていけなくなってしまう。
最初は学校の先生や同級生も通信簿を渡しに家に来てくれたり、声を掛けに来てくれたりしたんですけど、それが逆に、「自分は勉強もできない、学校も行けないダメな子だから、憐れみを受けている」という感情を引き起こしてしまって。
――ネガティブな感情が湧き上がってしまったと。
糸井 私の存在は忘れてほしい、と思っていました。そうすれば、自分が勉強ができないことも忘れてもらえるし、「いない存在」になれば、学校に行かなくていい理由になると思ったんです。
撮影=山元茂樹/文藝春秋