コメディエンヌとして開眼した
このとき彼女が演じたのは、阿部寛扮する物理学者・上田次郎とともに奇怪な事件の謎を解く売れないマジシャン・山田奈緒子。同作をもって仲間はコメディエンヌとして開眼したとも評された。本人は《あの役から学んだのは、コミカルな芝居をするときは笑わせようと思っちゃいけない、気負わないということ》と後年語っているように(『SANZUI』2014年秋号)、ここで改めて役にのぞむ姿勢が固まったようだ。
20代で得た2つの当たり役『トリック』『ごくせん』
『トリック』は深夜枠でカルト的な人気を集め、2002年には続編『トリック2』が放送されたのに続いて映画『トリック−劇場版−』の撮影に入り、同年中に公開された。この間、仲間はゴールデンタイムの学園ドラマ『ごくせん』で、生徒たちに体当たりでぶつかっていく高校教師“ヤンクミ”こと山口久美子を演じ、こちらも当たり役となる。
この2作は俳優・仲間由紀恵にとって大きな転機となった。のちに《本気でドラマを作っていけるのって、これからなのかもしれないと考えさせられた作品でした。これから本当に死ぬかもっていうぐらい辛い現場にも、たくさん出会うだろうなって。このふたつの作品は、そのスタートだったんだなぁって思っています》と振り返っている(『JUNON』前掲号)。
考えてみれば、世の俳優のなかでも、20代前半にして2つも当たり役を得る人はなかなかいないだろう。ただ、そこで満足してしまわず、あくまでスタートと位置づけたところに仲間の仕事に対する真摯さが垣間見える。
『ごくせん』も『トリック』と同じくドラマの続編とともに映画版もつくられ、そろって人気シリーズとなった。『トリック』にいたっては、仲間が30代に入ってからも『劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル』(2010年)、『トリック劇場版 ラストステージ』(2014年)が撮られている。完結編となる後者の公開に際し、《こうあるべきという型にはまらず、失敗を恐れずにどんどん新しい挑戦をしていくことを学んだのがこの作品でした》と語っている(『日経WOMAN』2014年2月号)。実際、仲間は2シリーズと並行して新しい役柄に次々と挑戦していった。(#2に続く)