しかし幸いにも、瀬長さんは結婚を機にがん保険に加入していました。そんな彼女が最も助かったと話していたのが、「がん診断給付金(一時金)」です。一時金とは、がんと診断された際、保険会社から一括で支給されるお金のこと。支給金額は50万円、100万円など契約内容などによって異なりますが、一時金最大のメリットは、使い道が自由なことです。
がんに限らず、病気やケガといった場合、入院で使う寝間着といった細々とした日用品、交通費など、思わぬ出費がかさむもの。瀬長さんの家事代行・ベビーシッター代もまさにこの部類にあてはまるものです。他の相談者の方では、がんを機に健康に気をつけるようになったことから、サプリメント代にあてた、という方もいました。
抗がん剤治療前に卵子凍結をした人も
また、女性患者の方からよく聞く出費としては、個室代です。特に抗がん剤といった強い薬を使用する場合、副作用による見た目の変化に加え、配膳時のご飯の匂いでも吐き気が起きてしまう方もいるそうで、「個室でないと治療を乗り切れなかった」という声もお聞きしたことがあります。個室の場合、1日数万円といったお金がかかるので、一時金によって選択の幅が広がることは間違いないでしょう。
さらに、AYA世代(15~39歳以下)のがん患者の方で、将来の妊娠に備えて抗がん剤治療前に卵子凍結をされたお客さまもいました。現在では、がん患者の妊孕性温存(将来子どもを作るための可能性を残すための処置)に対して国の助成がはじまっていますが、当時はまだ制度開始前だったことから、一時金によってその費用を捻出したそうです。
保険適用外の先進医療を選べなかった20代女性
一方、子宮頸がんの診断を受けた20代の佐藤恵美さん(仮名)は、がん保険だけでなく、医療保険にも入っていませんでした。治療は健康保険が適用される範囲内にとどめ、高額療養費制度を使うことで最低限に抑えたそうですが、入院時の食事代やパジャマなどのレンタル代、抗がん剤の副作用で脱毛したのでウィッグを作ったり、手術後の肌に負担のかからない下着を購入したりと、“治療以外”のお金もかなりのものになったと言います。民間の保険に何も入っていなかったことからそれらすべてが佐藤さんの全額自己負担となり、貯蓄も少ない佐藤さんにはかなり重い負担でした。