「荒川線って桜というよりは、バラですよ」
愛称の導入は都電荒川線に限ったことではなく、JR西日本では吉備線を「桃太郎線」と呼んでみたり、秋田県を走る第三セクター・秋田内陸線は「スマイルレール秋田内陸線」などと言っている。こうした愛称は、大抵が“沿線活性化”“旅客誘致”を目的に付けられるものだ。だから利用者や沿線住民に定着していなければあまり意味がないような気がする。そして……。
「それにね、荒川線ってバラなんですよ、バラ。桜というよりは、バラですよ」(先程も登場した三ノ輪橋のおばさん)
この言葉通り、都電荒川線の沿線にはいたるところにバラが植えられている。三ノ輪橋や町屋の駅周辺には花壇が設けられてらんらんと咲き誇っているし、線路端にもバラが咲く。さらに5月中旬には町屋駅周辺で「バラの市」なるお祭りまで行われるというから、荒川線はさくらどころか“ローズトラム”と言っていいほどなのである。
「荒川バラの会」30年以上の活動
「荒川線沿線のバラは、昭和60年から植え始めたものなんです。荒川区は緑が少なく、どうにか緑化を進めたいと考えた時に都電荒川線の沿線に何か花を植えたらいいのではないかと。そこで、いくつかの花の種類を検討したのですが、華やかで目につきやすく、初夏と秋の1年に二回咲くバラがいいとなりました」
こう話してくれたのは、荒川区道路公園課緑化推進係の担当者。線路端のバラは区によって、そして三ノ輪橋や町屋の花壇のバラは地元住民のボランティアグループ「荒川バラの会」によって管理されているという。昭和60年からだから、実に30年以上。
「おかげさまで定着しまして、見頃の時期にはバラを見に来られたり写真を撮りに来られる方もたくさんいます。線路端のバラが見られるのは荒川区内の三ノ輪橋から荒川車庫前までの区間。区外でも豊島区さんのエリアになりますが、大塚駅前にも植えられるようになったり、バラはすっかり荒川線の代名詞のような存在になりました」(前出の荒川区の担当者)