「正直、バラだよなぁ」という荒川区の苦笑
となれば、気になるのは「東京さくらトラム」という愛称について。荒川線の代名詞がバラならば、愛称だって「東京ローズトラム」になってもいいじゃないか、と思うのである。30年以上沿線のバラを管理し続けてきた荒川区さん、内心穏やかならざるものがあるのでは?
「いや、まあ、なかなか言いにくいのですが、正直なところ『バラだよなぁ』という気持ちがないとはいえません(笑)。ただ、決まった経緯が一般投票でしたから、仕方ないですね」(荒川区の担当者)
そう、「東京さくらトラム」の愛称は、別に小池百合子知事のトップダウンで決まったわけでもなんでもなく、8の候補の中から一般投票を行った結果「さくら」が1位に輝いて選ばれたもの。もちろん「ローズ」も候補のひとつに入っていたが、結果は「さくら」「レトロ」に次ぐ3位。あえなく涙を飲むことになったのである。
沿線には飛鳥山公園など桜の名所も、ある
もちろん、荒川線沿線には王子駅近くの飛鳥山公園など桜の名所も数多い。それに東京都の花はソメイヨシノだから、「さくらトラム」という愛称だってなんの不都合もない。ずっと“都電とバラ”の組み合わせに親しんできた人たちにとっては、ちょっとばかり違和感があるだけで……。
ともあれ、愛称決定から1年たっても「東京さくらトラム」がさほど定着していないのは事実のよう。で、バラが見頃を迎えている5月の都電荒川線には、多くの人がバラを観賞しに訪れていた。というわけで、5月いっぱいがバラの見頃だとか。三ノ輪橋から早稲田まで、全線通して乗っても約1時間。1日乗車券もたった400円とかなりお得なので、都電の旅を楽しんでみてはいかが?
写真=鼠入昌史