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フランスの上質な風景画を一堂に

 クールベ晩年の作となる《山の小屋》ももちろん、彼が生涯をかけて築き上げた写実主義の考えのもと描かれた。「見る」に徹した彼の視点が画面全体に行き渡っているからこそ、150年ほどの時を経て絵を眺める私たちにまで、リアルな手応えを感じさせてくれるのだ。

 クールベ作品だけではない。この「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」は、出品作を風景画のみに絞り込むという、なかなか大胆な展覧会。風景ばかり延々と観せられるなんて、ちょっと退屈そう? 一瞬そんな気もするが、クールベ一枚だけでもこれほど見入ってしまうくらいなのだから、心配は無用だろう。

アルフレッド・シスレー《フォンテーヌブローの森のはずれ》1885年
アンリ・マティス《ブーローニュの森》1902年

 モスクワにあるプーシキン美術館は、一大フランス絵画コレクションを有することで知られる。その収蔵品から、17~20世紀の風景画65点が運ばれ展示されている。クロード・ロラン、ブーシェ、コロー、クールベ、ルノワール、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、アンリ・ルソーなどなど、錚々たる顔触れによる風景画とじっくり向き合ってみたい。

クロード・モネ《草上の昼食》1866年