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東京駅の自販機ストライキは、なぜ「共感」を得たのか

東京駅の自販機ストライキは、なぜ「共感」を得たのか

この現象は、戦後日本社会の変容なのかもしれない

2018/05/20
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会社はSNSの炎上を取引先に謝罪

 では、肝心のジャパンビバレッジ側の反応はどうだったのだろうか。

 同社は「火消し」に躍起になっている。関係者から寄せられた情報によれば、ジャパンビバレッジは取引先に対して、「SNSやメディア等において大変お騒がせしている」「ご心配をおかけし誠に申し訳ございません」と書面で平謝りをしているというのである。

 そこでは、わざわざQ&A形式で「東京駅でSNSにあるような組合活動『順法闘争』が起こっているのか?」「東京駅の売り切れ続出は事実か?」「今後、当社にもこのようなこと(順法闘争)が波及するのか?」などのストレートな問いを率直に掲載しており、今回の闘争に対する取引先からのプレッシャーが大きいことが見て取れる。

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 同社はその回答という形で、「一時的に売り切れることがございます」「SNSに一部記載のある売り切れが続出しているという状況とは認識しておりません」「順法闘争は一部のこと」などと、事実を否定や楽観的な見解を披露している。

 また、同社はこの書面で、「早期の解決に向け取り組んでおります」とも弁解している。しかし、同社が続ける組合敵視の対応は、早期解決に真っ向から逆行するものだ。

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このままでは労働基準監督署のメンツも丸つぶれ

 組合員を懲戒などしたら、数年にわたる順法闘争や断続的なストライキは覚悟しなければならないだろう。同社はイオングループやセブン&アイ・ホールディングスなどの大手取引先を抱えているため、JR東日本以外にその舞台が広がることもあり得る。

 労働基準法違反を指摘した労働基準監督署の勧告を真っ向から否定している点も、重大だ。監督署としては、2回勧告しても改善しないのであれば、刑事的措置を執らざるを得ない。まして、今回のような大手企業による明白な違法行為の場合、これを認めてしまうと他の企業にも「監督署の指導は無視しても大丈夫だ」という教訓を与えることになってしまい、監督署のメンツも丸つぶれとなってしまう。

 これまでも悪質な違法労働事件は、個別の紛争の枠を超えて、行政機関や政治の本格的な介入を招いたことがあるが、そのような事態になることも考えられるだろう。