300日を超えたあたりから、ふたりの関係がギスギスした理由
――しかし、500日も車の中で一緒なわけじゃないですか。お互いにイライラしたりすることはなかったですか。
コージ 300日ぐらいまでは大丈夫だったね(笑)。300日を超えたあたりから、僕のほうがけっこうイライラして。車内がギスギスしていたね。
さあや 常にイライラしていました。
コージ 最初は一緒にいても気にならないけど、だんだんとひとつひとつの行動が気に食わなくなるんです(笑)。
――どういったことが気になったのでしょう。
コージ なんだろうな。僕はわりと片付けないとダメなタイプで、極端に言うとリモコンをきれいにちゃんと並べるタイプなんですよ。でも、別にそれは人それぞれだし、悪いことじゃないじゃないですか。だけど、服を脱ぎっぱなしとか、たいしたことじゃないのに気になってきちゃうんですよ。
溜まりに溜まって「もう降ります」となったけど…
さあや 鼻歌を歌っているだけでキレられるみたいな(笑)。
コージ よくないよね。鼻歌とかいいじゃん。でも、なんか。
さあや 余裕がなかったんだと思います。もう、ストレスフルで。
コージ いま思えば、僕もおかしかったけど、同じフレーズしかフンフン歌わないんですよ。しかも、そこをずっとループしてるから「いつ、次にいくんだろ? 2番にいってくれよ」ってイライラしてきて、「ずっと同じところフンフン言ってない?」みたいなふうにキレたりね。
さあや ほんと、ちょっとしたことなんですけど。
コージ それが積み重なって。
さあや 私はあまり怒ったりしないんですよ。ピリついた空気になった場合、どこかに車中泊していたら外に行くし、早く寝ちゃったり、とりあえず遮断しちゃうんで。でも、溜まりに溜まって「もう降ります」となったときはありますね。神奈川で、ちょっと「無理だな」って。
――そこでコージさんも「ごめん」と。
さあや いや、言われてないです。で、荷物もまとめて降りる寸前だったんですけど、あと周ってないのが四国の4県だったんですよ。日本を回りたくて仕事を辞めたのに、ここで降りるのも悔しいなって。で、結局許してしまった。
コージ で、ギスギスしたまま四国を回りました。
さあや 会話せず。
旅をしたことでいろいろ変わった、考え方や感覚
コージ 四国、辛かった。けど、旅をしたことで考え方はいろいろ変わりましたね。
――どんなふうに。
コージ 何事にもとらわれなくてもいいんだって。仕事をやっていても、仕事にとらわれるほど自分を追い詰めなくてもいいんじゃないかって。人間関係のしがらみも、そうですね。いざとなったら捨ててもやっていけるなって感覚にはなりました。実際、そういうのを置いて旅に出られたんで。
さあや 私も同じ感じです。以前は会社員になって、バリバリ働くことが正義って考えになっていて。とくに都内に暮らしていると、いっぱい稼いで、いいところに住みたいとかおいしいご飯を食べたいとか、そういうことにステータスを感じちゃうじゃないですか。でも、必要なものだけを持って旅をしてたら「あ、これで生活できるんだ」というのがわかったので。
いま、美容師に復帰してるんですけど、「もっと、もっと」みたいな働き方とか生き方をしてなくて。必要最低限のなかで幸せを感じられるようになりました。