「刑事・鳴沢了」シリーズや「ラストライン」シリーズなど、ヒット作を世に放ち続ける作家・堂場瞬一さん。最新作『ポップ・フィクション』は、大正時代・出版文化華やかなりし頃を舞台にしたお仕事小説だ。

『ポップ・フィクション』堂場瞬一(文藝春秋)

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「明治以降の日本のメディア史を描きたかったんです。印刷技術が大陸から入ってきて、新聞が始まり、活字文化が花開く。大正デモクラシーの流れが言論文化を押し上げて、月刊誌が150万部も売れるような時代がやってくるんですね。誰もが、自分の発言で世の中を変えられると信じていて、熱く思想信条を語りあっていた時代。僕自身、新聞記者からキャリアを始めているので、ルーツを覗いてみたいという気持ちがあったんです。

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 それに、この業界にいると、最近は編集者と打ち合わせをしていても、景気の悪い話から始まるでしょう(笑)。だから、思いっきり景気のいい時代を、作品の中で生きてみたかったんです」

 

活字メディアの“社史”に特徴が!?

 この時代を描くにあたっては、新聞社や出版社の社史を読み漁ったという。

「それぞれにカラーがあって、新聞社の社史は淡々と記述している感じで、ドラマが浮かび上がってこない。かと思えば出版社はやり過ぎでは? と思うくらいに力が入っていて、小説みたいだと思うぐらい。片っ端から読んで、どこから物語を始めるか思案しました」

 主人公・松川晴喜は「市民公論」の編集者。ある日、名物コーナー「巻頭言」を任されるが、それをきっかけに筆者が大学を追われる事態に……。