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2024年の論点

「箱根駅伝が日本長距離界の実力を本当に底上げしているかは、判断が難しい」今こそ開催当初の理念の再検討をするべき理由

「箱根駅伝が日本長距離界の実力を本当に底上げしているかは、判断が難しい」今こそ開催当初の理念の再検討をするべき理由

2024/01/03

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ

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 箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)が、2024年1月に100回目の節目を迎える。今ではすっかり正月の風物詩になっている名物大会のスタートは、世界への挑戦だった。

第99回箱根駅伝のスタート ©️末永裕樹

企画者としてもアイディアマンだった金栗四三

 創始者は、日本最初のオリンピアンでもある金栗四三。競技者として日本スポーツ界の黎明期を引っ張っただけでなく、教育者、企画者として大変なアイディアマンだった金栗らしい壮大な発想で、当初は「アメリカ大陸横断駅伝にチャレンジするための国内予選」という位置づけだった。その際に、「ロッキー山脈越え」を想定し、「天下の嶮」と言われる箱根越えを盛りこんだコースを設定したというのが定説である。

 第1回(大正9年開催)には4校が参加し、優勝したのは、金栗の出身校でもある東京高等師範だった。以来、戦時中を除いて脈々と続き、数々の名選手を輩出してきた。ちなみに当初の目的であった「アメリカ横断駅伝」は、結局は実現していない。そして「駅伝」は日本独特のドメスティックな競技になったのだが、「世界に通用する長距離ランナーを育てたい」という純粋にスポーツ的な理念が最初にあったことは、忘れてはいけない。

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第1回の記録と第99回の記録の圧倒的な差

 2日間にわたる大会だけに、見どころは様々だ。まずは優勝争い。10区でアンカー同士の一騎打ちになり、ゴール前の秒の戦いで決まるなどという激しい展開はほとんどないが、終盤まで手に汗握る展開になることも少なくない。

 近年高速化が進んだことで、タイムも注目の的だ。第1回の記録は15時間5分16秒。2011年に早稲田大が初めて11時間の壁を破り、2023年に優勝した駒澤大は10時間47分11秒だった。この先、どこまで記録は伸びるか。

 さらに、翌年予選会なしで出場できるシード権(10位以内)争い、スピードランナーの下位からのごぼう抜き、途中で繰り上げスタートになって襷が途切れないかなど単一種目の大会で、ここまで様々な見所があるのも珍しいだろう。とにかくスタートからゴールまで目を離せないのが箱根駅伝なのだ。