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2024年の論点

「箱根駅伝が日本長距離界の実力を本当に底上げしているかは、判断が難しい」今こそ開催当初の理念の再検討をするべき理由

「箱根駅伝が日本長距離界の実力を本当に底上げしているかは、判断が難しい」今こそ開催当初の理念の再検討をするべき理由

2024/01/03

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ

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決定に至る道筋の可視化を

 さらに箱根駅伝は「関東学連」主催の大会、つまり本来はローカルな大会であるものの、全国の大学に参加のチャンスを与えようという意見も根強くある。注目度が非常に高いため、ここに出場するチャンスがあれば、選手のモチベーションも上がるだろう。100回大会では参加校が20から23に増やされ、関東学連以外の11チームも予選会に参加した。本戦出場はならなかったが、一応今回は「全国大会」と言えた。

 2025年の第101回大会では参加校は本来の20校に戻るとされているが、100回大会で「オープン」になったことを経て、「全国化」は本格的に議論されて然るべきテーマである。

 ただし、どんな方向へいくにせよ、議論、そして決定に至る道筋の可視化は必須だ。今や日本中が注目している大イベントである。ルールや運営方針の変更について、各大学やファンに分かりやすく説明する義務もある。

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箱根駅伝の「燃え尽き症候群」

 もっとも、これだけ盛り上がっている箱根駅伝だが、日本長距離界の実力を本当に底上げしているかどうかは、判断が難しいところだ。実際近年は、国際大会で、日本選手が長距離で高いレベルで活躍しているとは言い難い。

2024年箱根駅伝予選会

 よく言われるのが、「燃え尽き症候群」。箱根駅伝が陸上界有数のビッグイベントに成長した今、出場した、いや、出場が叶わなくてもそれに向けて4年間努力し続けたことで、競技に対する熱意が燃え尽きてしまう、というものである。

 この説が正しいかどうかは検証が難しいが、あれこれ言われるのも、箱根駅伝の注目度が高い証拠だ。それだけに、長距離を目指そうとするアスリートがもっと増えてもいいはずで、この辺で開催当初の理念に戻って、「いかに選手育成のベースにするか」を再検討していくべきではないだろうか。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。

「箱根駅伝が日本長距離界の実力を本当に底上げしているかは、判断が難しい」今こそ開催当初の理念の再検討をするべき理由

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