黒ずくめの男が目の前に
事件が起こったのは2022年12月2日。その日、大川は外出していて明け方4時頃に帰宅した。
「マンションの宅配業者や引っ越し業者用の臨時駐車場に見慣れない車があることに小さな違和感を覚えたのですが、気にせずに家へ入りました。
いつも通り、部屋のカギを開けると、その瞬間、誰かが駆け寄ってくる足音がしました。パッと振り返ると、黒ずくめの男が目の前に迫っていて、赤い液体状の催涙スプレーのようなものをかけられたんです。
命の危険を感じ、必死で相手を押しのけて距離を取ったのですが、その時、階段の陰からもう1人の男が走り寄ってくる姿が見えました。なんとか部屋に入り、カギを閉めることができましたが、次の瞬間には目に激痛が走り、視界が真っ暗になって……。
流水で目を洗ったり、氷で冷やしたりして、ようやく警察に通報できる状態に回復したのは20分後。当然、犯人たちは逃げ去っていました」
オートロックのない勝手口から…高い弊を乗り越えて侵入
角膜にダメージを負った大川は、医師から全治10日の診断を受けた。
「医師から『かけられたのが催涙スプレーだったのは不幸中の幸いだった。もし硫酸や塩酸などの薬品をかけられていたら失明していた可能性もある』とも言われ、ぞっとしました」
大川が住んでいたのはエントランスにオートロックが付いたマンションだ。だが、犯人グループのうち2人はオートロックのない勝手口の高い塀を乗り越えてマンション内に侵入。もう1人は臨時駐車場に止めた逃走用の車両に待機していたとみられている。
平穏な日常を切り裂いた恐ろしい犯行。しかし、よく見ると防犯カメラの映像に車両のナンバーや犯人の姿が残されるなど、プロらしからぬ杜撰さも見え隠れした。なぜ、自分が狙われたのか――。実行犯のテレグラムに残されていた“驚愕のやりとり”、裁判で明かされた恐ろしい事実とは。(#2に続く)
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