「今の日本の首相には、敢えて言えば『経済オンチ』くらいがちょうどいい。というのも『経済』に対して『政治』にできることはそもそも限られているからです」
そう語るのは、一橋大学経済研究所教授の陣内了氏。「文藝春秋」12月号掲載の特集「アベノミクス VS イシバノミクス」に、石破茂新政権への緊急提言を寄せた。
「経済オンチ」はポジティブに評価してもよい?
10月1日に発足したばかりの石破政権には、出だしから厳しい目が向けられている。まず自民党総裁選での勝利直後に株価が急落。首相就任直後には、植田和男日銀総裁との初会談を受けて「追加利上げの環境にない」と発言。利上げ容認派と見られていた石破氏の「発言のブレ」が問題視された。
これら一連の出来事から「経済オンチ」とも評される石破氏だが、陣内氏は必ずしも評価を下げる要因にはならないと語る。
「『経済がわかる』と自負する政治家ほど本来、市場に任せるべきところに介入しがちです。その結果、市場(価格)の自動調整機能が失われることがあります。その点、石破氏は、『経済』に対して謙虚に振舞っているように見えます。発言の軌道修正も、従来の発言に固執しすぎない柔軟性としてポジティブに評価してもよいと思います」
これからの日本経済に対してのアプローチ
陣内氏は「アベノミクスからの出口戦略がぜひとも必要」としながらも、金融政策の正常化を容易に進められないほど“負の遺産”は大きいと指摘する。
「第2次安倍政権下で、黒田日銀は国債の買い入れを積極的に進め、いまや日銀は日本国債の50%以上を保有しています。こんな特異な状況で金融引き締めを行えば、国債市場や株式市場でとてつもない混乱が生じる可能性があります」
では、日本経済に対してどのようなアプローチを取るべきなのか? 陣内氏は、ある提言をしている……。
特集「アベノミクスVSイシバノミクス」には、陣内氏の論考「経済オンチくらいがちょうどいい」のほか、大竹文雄氏の「解雇規制が大量の非正規を生んだ」、藻谷浩介氏の「『地方創生』コンサルには気を付けろ」がラインナップ。11月9日発売の「文藝春秋」12月号に掲載されるほか、「文藝春秋 電子版」(11月8日配信)で公開されている。
【文藝春秋 目次】〈緊急特集〉石破首相の煉獄 自民党崩壊 久米晃×曽我豪×中北浩爾/ジャンル別ガイド あなたに見てほしい映画/5つの臓器のアンチエイジング
2024年12月号
2024年11月9日 発売
1100円(税込)