ところが、一緒に住んでみないと分からないことも多くて、夏美さんは家事がまったくできない女性だった。おかげで家事はすべて石井がやることになり、おまけに彼女は朝が極端に弱く、夏美さんを起こしていると、自分まで遅刻しそうになるほどだった。
当初約束していた生活費も1度しか支払われず、毎月10万円ずつ返済するという「融資契約書」の内容も反故にされた。
それでも石井はガマンしていた。「夜の仕事を復活させないと、借金が返せない」と言われ、「それだけはダメだ」と反対したからだ。
石井は夏美さんと同棲していた5カ月間で疲れ果ててしまい、結局は別居することになった。最後は夏美さんに押し切られ、「絶対に本番はしない」という条件で、デリヘルに復帰することも許した。
「何で来るの? 身内からはお金を取れないじゃない」
だが、夏美さんに約束を破られるのではないかと思うと気が気ではなく、店のホームページに本番をほのめかすコースがあることを知ってからガマンできなくなり、自らそのコースを選んで、夏美さんを指名した。
ホテルにやって来た夏美さんは、石井を見るなり、「何で来るの? 身内からはお金を取れないじゃない」と言って泣き出した。
石井は構うことなく、仕事道具をあさり、コンドームを見つけたことから、「これは何?」と問いただしたが、泣いていて返事にならなかった。
夏美さんは泣いたまま、店にコールの電話。店側が機転を利かせて警察に通報し、警察官が店員とともにやって来た。
「私は交際している者で、怪しい者じゃない」
「でも、女性が嫌がっているのに付きまとうと、ストーカーになりますよ」
警察官は厳重注意をして帰って行った。夏美さんはその日限りで、その店をやめた。その後、ドライブをするなどのデートを重ね、石井とも仲直りした。
ところが、1カ月ほど経った頃のことだ。ドライブ帰りに石井が夏美さんの自宅に立ち寄ったところ、あまりにもゴミが散乱している様子を見て、思わず苦言を漏らした。
「汚ねぇなァ…。たまには掃除しろよ」
「そんなこと言うんだったら、もう来ないでよ!」
それで口論になったが、2日後には夏美さんから「冷蔵庫を買ったので見に来て欲しい」という連絡が入り、そのときはピカピカになっていたので、思わず「いつもこれぐらいきれいにしとけよ」と言ってしまった。
「いつまでそんなこと言うのよ!」
「そんなに怒るなよ…」
「もう帰って!」
「電車もないのに、こんな時間に帰れないだろ」
「いいから帰って!」