日本における殺人事件は、長期的な傾向としては着実に減っています。法務省が毎年公開している犯罪白書を見てみると、殺人事件の認知件数は昭和29年(1954年)の3081件をピークに右肩下がりになり、令和元年(2019年)には950件にまで減少しています。
一方、統計を詳しく見ていくと、殺人は「親族同士の事件」が全体の半数以上を占めていることもわかります。つまり、殺人事件が起きたら50%以上の確率で犯人は親族、ということが言えるのです。
殺人事件の多くは“家”で起きる。そんな現在の日本で、事故物件に遺された人々には、ある特徴的な言動が見られることがあります。それは一体何なのか――詳しくご紹介しましょう。(全2回の2回目/前編から続く)
エリート家庭で起きた“バラバラ殺人事件”
家庭内で殺人事件が起きたとき、遺された家族は「加害者家族であり、遺族でもある」という難しい立場に立たされます。こうした状況において人はどのような心境になるのか、実際のところは当事者にしかわかりません。ただ、しばしば「殺された被害者よりも、殺した加害者の側に寄り添う」という言動が見られることがあります。
そうした事件の中でも、特に大きく報じられたのは、15年ほど前に東京都心で起きたバラバラ殺人事件ではないでしょうか。
その家では、両親と3人の子供が暮らしていました。事件が起きたのは年末の12月30日。年末年始を母方の実家で迎えるため、両親と長男は東京を離れて帰省しており、家には21歳の次男と20歳の長女だけが残っていました。
このとき、次男は予備校に通う浪人生でした。対する長女は短大に通いながら、女優として舞台や映画に出演するなど、外向的な生活を送っていました。その日、2人の間で言い争いが始まると、次第に状況はエスカレート。遂には激昂した次男が長女を殺害し、さらにはのこぎりで遺体をバラバラに切断して袋詰めにしました。
年が明け、実家から戻ってきた両親が遺体を見つけたことで事件が発覚。まもなく、次男が逮捕されたのです。