日本における殺人事件は、長期的な傾向としては着実に減っています。法務省が毎年公開している犯罪白書を見てみると、殺人事件の認知件数は昭和29年(1954年)の3081件をピークに右肩下がりになり、令和元年(2019年)には950件にまで減少しています。
一方、統計を詳しく見ていくと、殺人は「親族同士の事件」が全体の半数以上を占めていることもわかります。つまり、殺人事件が起きたら50%以上の確率で犯人は親族、ということが言えるのです。
中には親が子供を虐待して殺した、介護に疲れ果てた子供が親を手に掛けた……といった事件も含まれますが、そうしたケースもあわせて「殺人事件の多くは“家”で起きる」というのが、現在の日本の状況なのです。今回は、そうした中で非常に印象深い事故物件をいくつかご紹介しましょう。(全2回の1回目/後編に続く)
兄弟間で殺人事件が起きた一軒家
まずは、10年ほど前に兄弟間での殺人事件が起きた関西地方の一軒家。そこでは普段、母親と長男、そしてその祖父母の4人が暮らしていましたが、事件が起きた日は別の県に住んでいた次男も帰省。家族での時間を過ごしていました。
しかし、久しぶりに顔を合わせた兄弟間で何かトラブルがあったのか……2人が激しい喧嘩を始めると、やがて激昂した長男がナイフで次男を刺してしまいました。救急車で病院に搬送されるも、次男は死亡。この事件は各メディアで報道され、事故物件となったその一軒家は、「大島てる」サイトにも掲載されました。
ただ、次男を刺殺した長男は、結局刑務所に入ることはありませんでした。彼は後に責任能力がないと判断され、不起訴になったからです。最初は実名で伝えられていた報道もその段階でピタッと止み、世間からはすぐにこの事件のことは忘れられました。
しかし、数年後、私は思わぬ人物から連絡を受けることになったのです。