「削除してほしい」と連絡してきたのは?
「私の自宅が事故物件として掲載されているので、削除してほしい」
そう連絡してきた人物の名前を確認すると、なんだか見覚えのあるような気がしました。この名前は、確か……。記憶を辿りながら、彼の言う事故物件を確認しました。そこでようやく気づいたのです。私にメッセージを送ってきた人物は、かつてその家で弟を刺殺し、不起訴になった長男本人でした。当初は実名報道がなされていたので、かすかに記憶に残っていたのでしょう。
事故物件の関係者からこのような連絡が来ることはそれまでもありましたが、私としてはサイトのルールに則って、粛々と処理するしかありません。ルール違反や法的に問題のある記述であれば削除などの対応も行いますが、そうでなければたとえ当事者からのクレームであっても応じることはできません。
ただ、このケースが非常に印象深かったのは、ほぼ同時期に、東海地方で起きた別の殺人事件の犯人からも、私宛に連絡があったからでした。
元義母の遺体を車に載せて……
多くの住宅が建ち並ぶそのエリアで殺人事件が起きたのは、今から15年ほど前のことです。40代の男が、数ヶ月前に離婚した元妻の母親を扼殺した、という事件でした。事件現場となったのは殺された元義母の自宅で、男は遺体を車に載せて移動していましたが、近くの公園の駐車場にいるところを警察に発見され、逮捕されました。
この事件では、犯人の男はそのまま起訴され、有罪になりました。そして懲役刑が言い渡され、刑務所に入ったのです。
しかし――それから10年も経たない頃、その男から直接、私に連絡がありました。「大島てる」に自分の犯罪歴が書かれているので、削除してほしいとの趣旨でした。
刑務所に入っているはずの犯人が、なぜこんなメッセージを送れるのか……。一瞬、そうした疑問が頭に浮かびましたが、私はすぐに状況を理解しました。彼は、もう出所していたのです。