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 実際の来客の反応はどうだったのでしょうか。SNSの投稿などでは、ブランドイメージに左右されることなく自分の感性で楽しむことができた、気に入ったものがあったから買ってみようと思った、など好意的なものが多く見られたそうです。店舗では最後に、来場者に対してブランド名が明かされています。そのうえで実施したアンケートには、83パーセントが「ブランドイメージが(好意的に)変わった」と回答したとのことです。この匿名店舗の作戦は、見事に成功したといえるでしょう。

 このように、イメージは付加されるばかりではなく、いったん付加されてしまったイメージを取り去ることも可能です。目の前にあるジュエリーにはなんの変化もないのですが、ブランド名によってあるイメージが投射されていたジュエリーへの想いや価値と、なんの先入観もなく見たジュエリーへの想いや価値は違っています。通常のブランディングではイメージを付加させることに腐心します。しかし、既存のイメージがマイナスであったばあい、それを払拭するためにあえて確立されたブランドを捨ててみることで、投射されるイメージが消失します。

 実際に存在するモノだけを見て、それが良いモノであるという新たなイメージが付加されれば、マイナスをプラスに転じさせる効果もあるのです。この匿名宝飾店の事例はそれに成功したと同時に、イメージというものがいかに曖昧でうつろいやすいものであるかも教えてくれます。

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 ブランドによるイメージという虚像と、実体として存在するモノ(や人間)、この虚実を結びつけているものがプロジェクションです。虚像をうまく利用すること、実体で勝負すること、そのバランスがブランディングにおいて特に重要であるのはいうまでもありません。ブランディングとは、虚実のはざまにある消費者や大衆のプロジェクションをどのようにコントロールしていくかという作業だといえるのです。