事故物件、あなたは住めますか? どれほど綺麗な部屋であっても、そこが事故物件であると判明した途端、住みたくなくなってしまうという人はかなり多いでしょう。直接的な影響があるわけではないのに、どうしてそう思ってしまうのでしょうか。
愛知淑徳大学の心理学部教授である久保 (川合) 南海子さんは、自分の認識が世界の見え方に影響を与える「プロジェクション」という心の動きについて指摘します。
ここでは、そんなプロジェクションについてさまざまな事例を紹介しながら解説していく『イマジナリー・ネガティブ 認知科学で読み解く「こころ」の闇』(集英社新書)より一部を抜粋して紹介。事故物件に抵抗感を抱く、その心理学的な理由とは……。(全4回の4回目/続きを読む)
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殺人があった部屋には住みたくない
私にはいわゆる「霊感」というものがないらしく、これまで幽霊のようなものを見たこともなければ、どこかの場所でなんだかゾッとするような感覚をおぼえたこともありません。そんな私でも、住む場所を探している時に「ここは以前、殺人があった部屋でして」と言われたら、どんなに条件が良くて気に入ったとしても、やはりそこで生活することを躊躇してしまうと思います。そしておそらく、たいがいの人は同じように思うのではないでしょうか。
いまの例のように不動産取引や賃貸借契約の対象となる土地・建物や、アパート・マンションなどのうち、その物件の本体部分もしくは共用部分のいずれかにおいて、なんらかの原因で前居住者がいわゆる「悲惨な死に方」をした経歴のあるものを「事故物件」といいます。
不動産を含む売買契約に関する民法では、業者には「契約不適合責任」があります。売主や貸主には物件の欠陥を担保する責任があると定められており、事故物件は「心理的瑕疵(欠陥)」に相当するとされています。
2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で、いわゆる事故物件について、不動産業者が入居予定者らに伝えるべきかどうかの指針案をはじめてまとめました。告知が必要でない事案は、病死、自然死、日常生活にともなう事故死です。告知すべき事案は、他殺、自殺、階段からの転落や入浴中の転倒・不慮の事故(食べ物を喉に詰まらせるなど)以外の事故死、事故死か自然死か不明なばあい、長期間放置され臭いや虫が発生するなどしたばあいとなっています。