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小林旭と美空ひばりの“出会い秘話”

 2人の出会いは1950年頃に遡る。当時小林は12歳。ひとつ年上のひばりはすでに天才少女歌手として、映画や舞台で活躍する人気者だった。

 4歳の頃から児童劇団に所属していた小林が、放送劇に出演するために訪れたNHKで目にしたのは、大勢の大人を引き連れて歩くひばりの姿だった。

「さながら大名行列のようだった。別世界を見せられたような驚きはあったものの、自分との境遇の違いを嘆くでもなく、その光景を冷静に眺めていたことを覚えている。これがスターさんというものかとね」

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 戦後日本を代表する不世出の歌手・美空ひばりは、昭和12年、日中戦争が始まった年に横浜の下町で生まれた。

若き日の美空ひばり ©文藝春秋

次々とヒットを飛ばす美空ひばり

 幼い頃から出征兵の壮行会で歌う姿が評判を呼び、9歳の時にNHK「のど自慢素人音楽祭」に出演。情感を込めて歌った「悲しき竹笛」が子供らしくないという理由で落選したが、卓越した才能を周囲が放っておかなかった。

 1949年、「河童ブギウギ」で正式に歌手としてデビューして以降、「東京キッド」や「リンゴ追分」などが次々にヒットして人気を不動のものとした。

 月刊「明星」の企画で2人が対面したのは、それから10年以上経ってからのことだった。

「互いに人気投票のナンバーワンになったということで対談することになり、何だかよく分からないけど、最後の方でひばりに『ところであなた、恋人いるの?』と聞かれたんだ。あの時『いないよ』と答えたのが身の因果。当時の俺は浅丘ルリ子とどうのこうのと言われていたから、適当に『います』とでも言っておけば、その後の展開は変わっていたかもしれないね」