和歌山地裁で行われている須藤早貴被告(28)の裁判員裁判。元夫で和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助氏(享年77)に対する殺人罪と覚醒剤取締法違反の罪に問われた須藤は初公判で「殺していないし、覚醒剤も飲ませていない」と無罪を主張した。

 これまで検察側は総勢28人の証人尋問を実施。うち2人が、覚醒剤の密売人仲間であるAとBだった。11月8日から始まった被告人質問。須藤は密売人らとの接触を認めつつも、野崎氏の命を奪った覚醒剤について、性的機能が衰えた野崎氏本人から購入を依頼されたと証言した。続けて密売人たちとのやりとりを振り返った。

77歳で亡くなった野崎氏

「今日中に和歌山まで…」

 野崎氏から購入費用として20万円を渡されたという須藤。現金はちゃっかり自分の口座に入れていたが、後日、野崎氏から催促され、「マジなの!?」とネット掲示板の「裏2ちゃんねる」を漁り始めた。

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〈鮮度のいい氷、野菜あります。 全国対応可〉

 氷は覚醒剤、野菜は大麻を表す違法薬物の隠語。そこに掲載されていた密売人Bの連絡先に須藤が電話をかけたのは、事件の約1か月半前、4月7日午後7時16分。

「電話が繋がって『サイトを見たんですけど』と言うと、Bさんが『何のサイトですか?』と。『1(グラム)、2.8(万円)』と答えたら話が伝わりました。『今日中に和歌山まで持ってくることはできますか』と言ったら郵送を提案されました。でも先払いだというので、詐欺で騙されるかもしれないと思い、配達をお願いしました。Bさんは『配達してもいいけど、ドライバーがいるし、高速代、ガソリン代もかかる。急に持って来いというなら、その分のお金はもらうよ』と」(須藤の証言内容より)

 須藤の記憶だと、提示されたのは1グラム10万円。かたや、法廷でAは「4グラムから5グラム、10万円から12万円」、Bは「3グラム15万円」と証言している。なお、Aは「本物の覚醒剤を売った」と言い、Bは「氷砂糖を砕いた偽物」と言い張った。