稲垣がさらなる変化を遂げたのは…
稲垣吾郎さんがさらなる変化を遂げたのは、2011年にTBS系の読書バラエティ番組『ゴロウ・デラックス』を始めてからです。
話題の本の作家が毎週ゲスト出演し、ホストの稲垣さんとトークを繰り広げるというもの。毎週指定された本を読んで、しかも作者と話せるほどに内容を理解しておくというのは、なかなかハードな仕事です。よほどの読書好きでなければ務まりません。
稲垣さんは根っからの本好きというわけではなかったんじゃないかと思います。それでも番組と真摯に向き合ってくれて、毎回しっかりと読み込んできました。
本を読んでその内容について話す機会があると、人はつい自分の気づいたことや感想を言いたくなるものですが、稲垣さんは番組でそんなそぶりを見せませんでした。作家にとことん話を聞き、言葉を引き出す姿勢を崩さなかった。「聞き上手」という稲垣さんの特性が存分に発揮される場となりました。
番組は好評を得て、制作側としてもどんどんハイレベルな要求をするようになっていきました。本を選ぶとき、時事性や意義があれば分厚くて難解な本でも遠慮なく取り上げましたし、大御所作家にもどしどし出演のアプローチをしました。
稲垣さんに対する作家からのウケは良好で、「『ゴロウ・デラックス』だったら出演オーケー」という声も多数あがりました。それで小説家や漫画家まで、ありとあらゆる作家が出演してくれることとなりました。
稲垣吾郎さん本人にとっても、この番組での体験は大きい糧となりました。いま稲垣さんは50歳となり、大人の役者として味わい深い演技を見せています。ラジオ番組も続けており、内容豊かで評判です。『ゴロウ・デラックス』で読書体験を積み重ねたことが、その後の活動にいい影響を及ぼしているのだろうと思います。