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「公道でナメられない車」という観点

 最後に紹介するのは、葬儀関係の会社に勤める50代の江藤さん(仮名)。現在は飲食系で働く妻と2人で埼玉県に暮らしており、3人の子どもはすでに成人しているというが、アルヴェルのサイズ感が好きで今も乗り継いでいると話す。

「初代エスティマからずっとミニバンですね。当時はまだ子どもが小さかったけど、一番下の子が小学校入るあたりで20のアルファードが出て、エスティマも古くなったし買おうかって。それから30前期のヴェル、30後期のアルと、3台乗り継いでいます。

 もう子どもは大きくなっていますが、一回こういう広いのに乗っちゃうと、なかなか戻れないですね。普段仕事でハイエースに乗っているのもありますし、やっぱり妻の軽に乗ると、割り込みとか車間距離とか、まわりの車の動きが全然違って怖いですし。公道でナメられないじゃないですか。

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 デザインはまぁ気に入っていますよ。ただ前はいいけど、後ろはあんまりかな。新しい40は後ろもいいし、買えたら買いたいんですけど。これだけ買っているのにディーラーからは抽選って言われて、なかなか買えないんですよね」

 派手なデザインを「公道での存在感」という点から肯定的に評価している点では、ネット上に見られるステレオタイプと重なる部分もあるだろうか。ただ話を聞くなかで、「アルファードで威張りたい」といったニュアンスは感じられなかった。

「アルヴェル購入層=マイルドヤンキー」は本当か

 このように、実際のアルヴェルオーナーに話を聞いてみると、「周りに自慢したい」といったステータス面よりは、快適性や利便性などの「現実的なメリット」から購入を決める傾向が読み取れた。

 とはいえ以上の内容は、ごく小規模な聞き回りの結果であり、全体的な傾向とは異なる部分も大いにあるだろう。それでは、より多くの購入者に触れているディーラーの営業スタッフはどのように感じているのだろうか。

「個人の購入者層としては、30代から40代のファミリー層が一番多いですね。たとえばノアを選ぶ方に比べると、ゴージャス感や派手さを好む方は多くなるんでしょうけど、そこまで顕著な違いは感じません。

 たくさんの方に選ばれている車ですし、とくに決まった傾向はないと思いますよ。会社員のいわゆるパワーカップルもいれば、経営層もいますし、個人事業主の方もいて、ファッションや持ち物も人によりけりです。

 なので収入に関しても、『色々』としか言えませんが……ただ、もし購入者の平均をとったとしたら、同年代の給与水準よりはかなり高くなるでしょうね」(トヨタ系ディーラースタッフ)

 実際のところ、年間で合計10万台前後にも及ぶアルヴェルの販売台数を考えれば、オーナーたちの間に画一的な傾向を読み取ることなど不可能だろう。

 こうした状況をふまえると、「アルファードに乗る人はこんな人」というカテゴライズは、「カローラに乗る人はこんな人」というのと同様に、ほとんど意味がないように思える。