このところSNSやネット掲示板を中心に、「残クレアルファード」という言葉を見かけることが増えてきた。
どうやら「残価設定型クレジット」という方法でアルファードを買うことが、一部の目には「見栄っ張りな行為」として映るらしいのだ。
一体なぜ、残クレでアルファードを買うと「無理して乗っている」などと言われてしまうのか。残クレの仕組みや購入者の事情についてディーラー関係者に話を聞くと、昨今の「車の買い方」をめぐる意外な実情が見えてきた。
残クレは「返却前提」で安く乗れるシステム
そもそも残クレとは、あらかじめ「車両の返却」を前提することで、本来の価格から「将来の売値(=残価)」を引いた額を支払うローンのことだ。
たとえば600万円のアルファードを購入する際、3年後の残価が400万円と設定されていれば、残りの200万円分を3年間で支払っていくことになる。つまり、「この車は本来600万円だけど、3年経っても400万円で売れるから、それまで200万円で乗せてあげますよ」というわけである。
仕組みとしてはスマホの2年返却プログラムと同様であり、「実際に使用する期間の分だけ対価を支払う」ことを要点とする。
これにより、従来型ローンの「目先の費用を抑えられる」というメリットはそのままに、「短期間で新車に乗り替えやすくなる」という利点も生じることになる。
おそらくネット上の「見栄っ張り」といった声の背景には、このように「車両を買い上げることなく安く済ませているのに、いつも新車に乗っている」という残クレユーザーへのモヤモヤ感があるのかもしれない。
「高い車ほど割安」な残クレのカラクリ
しかしなぜ、アルファード購入者ばかりが残クレであることを揶揄されているのか。筆者が懇意にするディーラーの営業スタッフからは、次のような話があった。
「基本的には、人気のある高額車ほど残クレのメリットが大きくなりやすく、選ばれる割合も高くなる傾向にあるんです。『将来どれくらい価値が残るか(=残価率)』は車種によって設定が異なり、アルファードのように中古車需要も大きな車種では、やはり残価率も高くなります。
要するに、将来高く売れる車ほど、割安で乗れるシステムなんですよね。残価率の設定によっては、クラスが下の車と支払額がそう変わらなくなるケースもあります。
これは旧型の頃の話ですが、残クレでノアやヴォクシーを検討されている方に、アルファードの見積もりをお見せすると、『全然変わらないじゃん』とアルファードを選ぶ方もいましたね」(トヨタ系ディーラースタッフ)
たとえば先代モデルの価格帯をふまえ、「500万円のアルファード」を「3年後残価率67%」の残クレで買ったとすると、ローン返済の対象となるのは約165万円。対して、「350万円のノア」を「同55%」で契約した場合には約157万円になる。
車両価格には150万円の開きがあるのに、残クレであれば8万円にまで差が縮まる。実際には利息分でもう少し差は広がるものの、「ノアとアルファードの差」を考えれば破格の安さであることに変わりはない。
このような「高く売れる車ほど割安になる」というカラクリが、どうやら「残クレアルファード」に対するモヤモヤ感の根っこにありそうだ。