「車を所有してこそ一人前」はもう古い?
上に挙げたような「アルファードに特有の事情」を抜きにしても、残クレの利用者は増えているようだ。
「車種を問わず、年々残クレを使う人は増えている印象がありますね。とくに20代から30代の方だと、抵抗感なく選ばれているケースが多いように思います。
スマホの購入でも似た支払い方法が普及していますし、あとはサブスクのサービスに日頃から触れている影響もあるのかもしれません。
それ以上の年代の方でも、たとえば『投資の資金を手元に残したい』といった理由から、初期費用の少ない残クレを選ばれるケースはよくあります」(同前)
収入はなかなか増えないのに、年々あらゆるものが値上がりし、おいそれとはモノを所有できなくなっている。そうしたなか、残存価値を見据えつつ、「使う分だけ払う」という残クレの考え方は、時代のニーズを反映したシステムなのだろう。
残クレの普及は「価値観の変化」なのか
しかし裏を返せば、このような消費形態の変化を、モノが買えない現状に対する「苦肉の策」と見ることもできそうだ。
総務省の家計調査報告によると、2023年における1世帯あたり(2人以上)の平均貯蓄額は、40歳未満で782万円。一見余裕があるようにも思えるが、同年齢層の平均負債額は1757万円と、差し引き975万円のマイナスが生じている。2人以上の世帯は、平均して1000万円近い借金を負っているのだ。
「住宅ローンを考えれば妥当だろう」と思われるかもしれないが、10年前の2013年における「貯蓄-負債」の額は343万円のマイナス。さらに2003年においては、そもそも貯蓄額が負債額を上回っている。この20年間で、40歳未満の貯蓄に対する負債が年々膨れ上がっているのである。
こうして見ると、「残クレ購入者の割合が増えている」という事実からは、なにやら不吉な兆候を感じざるをえない。賃金は横ばいのまま、車はどんどん高くなり……同クラスの車に乗り替えようと思えば、そのたび返済額がジワジワと増えていく。
強度を増していくローン返済のボディブローに、いつかタオルを投げなければならない日が来るのではないか。そう思うと、種々のローンを抱える38歳の筆者としては、とても「残クレアルファード」を揶揄するような気持ちにはなれそうもない。