高級車のドライバーは横暴になりやすい?
もちろん、無数にいるアルヴェルオーナーのなかには「イカついデザイン」が気に入り、見栄のため購入したという人もいるにちがいない。
アルヴェルに「ステータスの象徴」としての側面があることは否定できないし、そうした面を重視する人たちに好まれているのも確かだろう。アルヴェルの純正オプションとして設定されるエアロパーツの派手さを見れば、そのような「威圧感」を求める層がひとつの主要ターゲットとされていることも窺える。
また運転マナーについて言えば、そのように「権威性を求めて車を買う人」の運転が横暴になりやすい、という偏見めいたイメージも、まったく根拠がないわけではなさそうである。たとえば2019年に警察庁交通局の矢武陽子氏が発表した「日本におけるあおり運転の事例調査」によれば、調査対象となった加害車両のうち40%が500万円以上の車種だったという。
「ステータス性の高い車に乗っている」という自意識が、「格下の車は道を譲るべき」といった運転の態度につながるのだとしたら、ステータス性を求めてアルヴェルを購入したオーナーの運転が横暴になる、という傾向があったとしても不思議ではなさそうだ。
実際に街中を走っていても、ネット上で言われるような「マナーの悪いアルヴェル乗り」を目にすることがある。筆者もつい先日、愛車のアルトで100円寿司に行った帰り、駐車場で思いきりこちら側にはみ出して止めているヴェルファイアに出くわし、小さなイラ立ちを覚えたばかりだ。
一部のオーナーによって強化される「ガラの悪いイメージ」
しかし冷静に考えれば、「斜めに止まっている車」などさして珍しくはないはずだ。これがたとえばカローラであれば、「駐車が苦手なんだな」と特段印象にも残らなかったかもしれない。
対してアルヴェルの場合には、流通台数が多いことに加え、ボディの大きさやデザインの威圧感もあり、「マナーの悪い1台」がことさら目につきやすい。ステレオタイプに合致するドライバーを見ると、さらにネガティブなイメージも強化されるものである。
実際のところ、そうしたイメージを形成しているのは、無数にいるオーナーのうちのごく一部にすぎないのだろう。そもそも世のアルヴェル乗りがことごとくオラついた運転をしていたら、公道は今ごろデスロードさながらの様相を呈しているはずである。
むしろアルヴェルがこれだけ普及し、快適さや使い勝手、リセールバリューを含めた経済性など「現実的なメリット」が広く知れ渡るようになった現状においては、もはや「生活上の合理的な視点からアルヴェルを選ぶ普通のオーナー」が多数派だと考えるのが自然ではないだろうか。
ただいずれにせよ、街にアルヴェルが増えすぎているきらいはあるのだろう。現状、プレミアム系のミニバン市場は実質的に「アルヴェル二強」となっており、「広くて豪華な車に乗りたい」となれば猫も杓子もアルファード、といったありさまである。
政治家に芸能人にインフルエンサー、職場の上司に地元の同級生、ママ友に親戚、あの日あおってきたドライバー……どこへ行ってもアルヴェルばかりの現状では、「誰かに対する不満やコンプレックス」がアルヴェルに転嫁されてしまうのも、無理からぬことなのかもしれない。