親にウソをついてAO受験塾へ

 親には、大学を受験することなんて言わなかった。高3、18歳の私は自分のやっていることを親に話すのがダサい、話したことで日々の仕事や生活についてあれこれ言われて介入されるのが超ダルい、と思っていた。

 ある種、反抗期だったのだと思う。出演したテレビ番組を一緒に観るのなんてありえなかったし、私が家にいる時は観るのも絶対やめてと伝えていた。スタジオでもロケでもうまく振る舞えないでいたから、テレビから自分の声が聞こえるとゾワゾワしてしまうのだ。とはいえマネージャーさんから「オンエアは絶対観なさい」と言われていたので、子どもの頃、親に隠れてファミコンをやっていたのと同じ感じで、オンエアは1人でこっそりと観た。

「仕事」とウソをついて塾に通った黒歴史高校生ではなくなる時期が迫ってきて、仕事でも結果が出ず、私は自信を失っていた。

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撮影/荻原大志

 今も変わらずだが、思い込みで突っ走るところがある私は、親に内緒で勝手にAO受験専門の塾と契約した。当時貯めていたお金の大半をつぎ込んで、集中講座に通ったのだ。

 確か3ヶ月で20万円くらいの費用がかかった。

 普段は10円単位の支出にこだわるくらいケチな性格なのに、突っ走る時は散財しがち。自覚があるのに、止められないのは今後どうにかしていきたいところだ。

 受験のことも言わなかったのだから、塾も当然そうだ。親に「仕事」とウソをついて家を出て、渋谷にあるAO受験塾に通った。たぶん気づいていなかったはずだし、今も私の口から塾のことは話していない。

 塾では小論文として提出する文章の添削を受けた。私が選んだテーマは、地方創生。そのためのアイデアとして移動式直売所を作り、各地域の魅力をアピールしていく、という内容だった。自分としては準備期間の短い中で、それなりにまとめられたと思ったのだが、結果は不合格。付け焼き刃の小論文で合格できるほど、慶應SFCは甘くなかった。

 他にはどこも受けていないので、私の大学受験は終了。進学はあきらめて、何事もなかったかのように仕事を続けた。今では完全な黒歴史だ。

撮影=荻原大志

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