「がんの闘病においては、おひとりさまならではのメリットもある」と語るのは、ベテラン医療ジャーナリストの長田昭二(おさだ・しょうじ)氏。医療情報のプロであり、かつ自身も「おひとりさまのがん患者」である氏が語った、独身者のがん患者だからこそのメリット・デメリットとは? 新刊『末期がん「おひとりさま」でも大丈夫』(文春新書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

がんが転移したあとに撮影したレントゲン ©文藝春秋

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「おひとりさま」の闘病は忙しい

 超高齢社会の進展により、配偶者を失って一人で暮らす高齢者が増えている。熟年離婚も珍しいことではなくなり、そもそも結婚をせず、生涯独身という選択をする人も少なくない。

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 じつは僕もそんな「おひとりさま」の一人だ。

 僕の場合、自分の意思で独身を続けているわけではない。2度も女房に逃げられた「バツ2」だ。僕のがんが見つかったのは2度目の離婚の後なので、独身になってから──ということになる。

 自分ががんになり病院通いをするようになって気付いたことがある。僕がかかる泌尿器科は男性患者が多いのだが、待合室を見渡すと夫婦連れが多く目につく。患者である夫のほうは待合室のイスに座って何するでもなく過ごしているのに対して、妻のほうが、おそらく夫の病気に関する情報が載っているのであろう本や雑誌を熱心に読み込んでいる。

 夫婦でいればそこに補完作用が働き、共に危機を乗り越えられるのかもしれないが、おひとりさまががんにかかると、すべてのことを自分で決断し、自分で処理していかなければならなくなる。「女房まかせ」ができない男の独り者ほど情けないものもない。

 治療の選択やスケジュールは医師と相談して進めるにしても、日常に起こる身の回りのこと、特に「仕事」に絡むことはきちんと整理しておかないと、いろんな人に迷惑をかけることになる。