渋谷から“排除”される若者
大変貌を遂げつつある渋谷の街の中ではじき出され始めたのが、それまで街中を闊歩していた中高校生などの若者だ。彼らは元来、渋谷センター街を中心とした宇田川町界隈に生息しながら、道玄坂、円山町、南平台、桜丘あたりに足を伸ばしていたのだが、近年の開発によって、ほぼセンター街の中に閉じ込められた状態になってしまった。
すでに女子中高校生のかなりの割合が、街を北上し、原宿からさらに北の歌舞伎町から大久保、新大久保付近に屯するようになっている。彼ら彼女らにとっては、部厚い大理石を敷き詰めた冷たい床にじかに座るのはどうにも居心地が悪いだろう。だいたい、周囲を歩く人たちが皆、現代の花形産業であるIT・情報通信系で働くエリートたちというのも、相性が悪すぎだ。
また最近の渋谷は、時にははっちゃけたい彼らに冷たい態度をとる。昨年から始まったハロウィン排除は、街を訪れていた外国人も含め、彼らを「お呼びでない人たち」として排除する方向に向かっている。
清潔で整然とした街並みとなった渋谷の街を歩いてもらっては迷惑だ、と言っているようにも見えるのだ。
2030年、渋谷はどうなるのか
さてこんな発展する街、渋谷に死角はないのだろうか。少々心配なのが、この街に急速に集結するようになったIT・情報通信産業だ。今は成長力の高い「伸び筋」の産業であるが、産業の栄枯盛衰は世の常だ。かつて飛ぶ鳥の勢いをみせていた繊維や鉄鋼業は廃れ、日本の代表的産業の自動車や電機にも陰りが見えはじめた。人々の働き方にも必ずしもオフィスというハコを必要としないライフスタイルが急速に市民権を得始めている。いつまでもテナント候補として思い込んでいると、産業全体での環境が変わった瞬間、多くのテナントを一度に失うリスクもありそうだ。
これからの開発が、これまでは渋谷の街の歴史とともに生きてきた東急グループが主体であったものが、ヒューリックや三菱地所、東京建物といったよそ者の手によるものが増えてくることも気になる。
現在計画中の再開発事業が出そろってくる2030年。日本の人口は今まで以上に下げ足を速め、高齢化は頂点を迎えている。そのとき、渋谷の街はどんな顔をみせるのだろう。そしてセンター街にはまだ若者の姿を見ることはできるのだろうか。
渋谷の将来像から目を離せない。