初夜において新郎よりも先に新婦と性交することができる…かつて世界には「初夜権」という、権力者や年長者だけに許された「風変わりな習慣」があったのはご存知だろうか? ここではそんな奇習を巡る、日本でおきた「奇妙な事件」について紹介。新刊『戦前の日本で起きた35の怖い事件』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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「初夜権」とはいったい?
「初夜権」という言葉をご存知だろうか。領主や酋長などの権力者、または神官や僧侶などの聖職者、あるいは長老や年長者といった世俗的人格者などが、所有する領地や統治する共同体において、婚約したばかりの男女や結婚したばかりの新婚夫婦が存在した場合、その初夜において新郎(夫)よりも先に新婦(妻)と性交することができる権利のことだ。
主に中世ヨーロッパ(5世紀頃~15世紀頃)で存在したとされるが、日本においては20世紀以前に全国各地の集落で初夜権に関連した風習があり、ここで紹介するのも、花嫁の処女をめぐる村独特の伝統儀礼がもたらした怪死事件である。
1883年(明治16年)1月24日夜、宮城県宮城郡七ヶ浜町花渕浜の1軒の家で結婚式が執り行われた。花嫁を迎える新郎宅には親戚や村人が集まり、屋内は祭りのような雰囲気だった。
三々九度の盃の儀式が済み、宴会が始まる。が、当時この地域では“飲めや歌えや”より重要な儀式があった。婚礼の晩に花婿の父親が花嫁と同衾(一緒に寝ること)し、性行為をした後に祝言の杯を取り交わす「仮の一夜」と呼ばれる奇習である。
まだ参列者もいるなか、花嫁が宴の場を離れ奥の屏風の間に行き長襦袢に着替える。そこに新郎の父親が向かったのは21時頃のことだ。