今では更生を果たし、地域住民からの信頼も厚いNPO法人「五仁會」(主な活動内容は暴力団および非行少年の更生支援など)の広報として活躍する西村まこさん。
ところが時には“危ない目”に遭うことも…。ヤクザをやめて、更生支援のために努力する彼女の姿を、著書『「女ヤクザ」とよばれて ヤクザも恐れた「悪魔の子」の一代記』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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元プロボクサーに殺されかける
知り合いのヤクザ関係者から40代の男を預かってほしいとお願いされました。「こいつ、行くところがないので、しばらく置いてやってください」と頼まれました。部屋はいくつも空いていますし、同業のよしみもあり、深く考えずに「いいよ」と言ったのが間違いのもとだったのです。
実際にこの男を預かってわかったのですが、元プロボクサーという体育会系のわりにはガッツがない。面接は行きますが、ことごとく不採用になります。家にゴロゴロしていますから、私としては、ただ飯を食わせるわけにはいかないので、パシリとして活用していました。もちろん、私の性格ですから、「あんた、早く仕事を見つけろよ」と、いつもケツをかいていましたが。
だいたい好きでもない男と同じ屋根の下に住むのは、おもしろいものではありません。さらに、しばらくしてわかったことですが、この男はメンヘラでした。
ある日、「おい、○○を買ってきてくんない?」と言いつけたら、反抗的な態度を示します。私としても日ごろの態度にイラついていたこともあり、「てめー、なんだよ、その態度は」と言いながら軽く小突いたのです。
すると男は反撃し、つかみ合いになりました。この男に腕相撲で負けたことがない私は、負ける気はしませんでした。ところが、蹴りを食らわせてやろうと足を上げたところでフローリングの床でスリップし、すっ転んでしまったのです。このとき、こたつの角で胸を打ち、あばらが折れたようです。
さらに、うつぶせに転がった私に男は馬乗りになると、手近にあった腹筋ローラーで私の後頭部や背中を手加減なしで殴打します。「元」とはいえプロボクサーの力でやられたら、たまったものではありません。
気がついたら病院にいました。おそらく、よほど大きな声を上げていたのでしょう。