「西村がワシの給料からピンハネしてるやろ」――ときには助けたヤクザからいわれのないピンハネを疑われたことも。それでも西村まこさんが「更生支援」をやめない理由とは?
更生を果たし、地域住民からの信頼も厚いNPO法人「五仁會」(主な活動内容は暴力団および非行少年の更生支援など)の広報として活躍する彼女の思いを、著書『「女ヤクザ」とよばれて ヤクザも恐れた「悪魔の子」の一代記』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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元受刑者と同居することの大変さ
さて、退院という日、大勢の警察官が部屋に来ました。総勢20人ほどいたのではないでしょうか。ひとりの刑事が逮捕令状を示し、「西村、殺人未遂で逮捕な」と冷静に告げ、病床の私に手錠をかけました。パトカーに乗せられ、岐阜南署に行く通過点に私の家があったので、「日用品を取ってきたい」と言いましたが、無表情の警官が放った「ダメだ」のひと言で却下。そのまま署内の独居留置場にブチ込まれました。
ただ、幸いなことに、私は退院といってもボロ雑巾のようなありさまです。そこは警察もわかってくれ、調べも手加減してくれていたようです。
調べでは「私はいっさい手を出していない。向こう(住まわせてあげていた男)が自殺しようとして包丁を自分の腹に向けていた」という趣旨の供述をしました。
男のほうは初めての逮捕なので気が動転していたのか話が二転三転したらしく、信憑性に難があったようです。ただ、彼の証言は「殺される前に殺そうと思った」「でも、西村さんには悪いことをした。ここを出たら慰謝料を払いたい」とも言っていましたから、少しは反省していたのかもしれません。
取り調べはスムーズに進み、勾留満期。結果、男側の傷害となり、罰金20万円で落ち着きました。私はパイになり、22日で留置場を出ることができました。
この事件以降も、刑務所を出て行き場がない人や、昔のつてをたどって頼ってくる人があとを絶ちませんでした。この事件を知っている人は「まこちゃん、こないだ、ひどい目にあったから、面倒を見るのもほどほどにしなよ」と言いますが、困っている人の面前でドアを閉めるわけにもいきません。