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伊丹十三が主演のドラマ『源氏物語』、あれは凄かったなあ

―― カルチャーの入り口はテレビからだったんですね。

高橋 今の若い子たちがネットをやるのと一緒ですよ。“ネット漬け”ではなく僕は“テレビ漬け”。親も夜更かししてたから、夜10時とか11時ぐらいまで観てましたもん、『拳銃無宿』とかね。スティーブ・マックィーンが映画に出る前に初主演したドラマです。だから、マックィーンは僕らにとってはテレビの人なんですよ。『コンバット!』も第1回から最終回まで全部観てます。

 

―― 当時はビデオもなかったわけですよね?

高橋 そう、録画して後から観ることはできないから常にリアルタイムでテレビの前に座ってました。この前、知人と話したんですけど、1965年ぐらいに市川崑監督の『源氏物語』っていうドラマがあったんです。知ってます? エミー賞を取ったんですよ。

―― へえーっ!

高橋 当時はビデオがないんで残ってない。記録と僕たちの記憶だけが残っている(笑)。光源氏は伊丹十三。当時はまだ「一三」と名乗っていました。

―― ええーっ!

高橋 脚本に谷川俊太郎も参加していた。音楽は武満徹。

 

―― すごいメンバー! 連続ドラマですか?

高橋 そうだったと思います。よく覚えてますよ。当時の最高の女優をキャスティングしているんだけど、市川流のリアリズムを追求しているのでみんな眉毛剃られていました。だから、女優さん、誰が誰だか分からないんです(笑)。にもかかわらず、会話は全部現代語なんですよ。今なら「ヤバいじゃん」みたいな感じでしゃべる。しかもセットは能舞台みたいな白い空間ですよ。姿格好はリアリズムなのに、セリフは全て現代語という、映画でもできないような実験的ドラマ。あれは凄かったなあ。

『11PM』ほぼ放送事故の対談企画

―― 今のお話を伺うと、明治の文豪が「たまごっち」とかをやる高橋さんの『日本文学盛衰史』に通ずるものを感じます。

高橋 遠い影響はあるかもしれませんね。この市川崑の『源氏物語』の考え方って、今でいうとポストモダンの考え方だと思います。格好は完璧に再現して、その過去の人たちをそのまま連れてきて現代語で喋らせる。50年前にとんでもない企画が存在したんですよね。

 

―― それが残ってないのは本当にもったいないですね。

高橋 『11PM』だって映像はほとんど残っていないんじゃないですか? ムチャクチャな企画があったんですよ。お互い全く面識がない「偉人」の対談を即興で、生放送でやるっていう。特にスゴかったのが当時もう80歳くらいのノーベル賞級の詩人・金子光晴とボクサー・輪島功一の対談。初対面のスタジオで「さあ、どうぞ」って、あとは放置(笑)。「何なさってる方ですか?」「詩を書いてます」「詩? 難しいですね」「……」みたいな。

―― その場に司会はいないんですか?

高橋 いない。だから、しょっちゅう沈黙が続いちゃって、ただ2人っきりの時間が流れていく。ほぼ放送事故ですよね(笑)。あとから番組司会の藤本義一が興奮して「面白いね、これは!」って。こういう企画に文句を言われなかった時代なんですよね。