11月14日朝、何気なく開いた北海道新聞の1面トップを見て、私は思わず目を剥いた。

〈道猟友会 クマ駆除拒否へ 全71支部に通知検討〉

 記事のリードはこう続く。

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〈北海道猟友会(札幌)が、自治体からのヒグマの駆除要請に原則応じないよう、全71支部に通知する方向で最終調整していることが13日、分かった。砂川市の要請による駆除で発砲した弾が、建物に当たる危険性があったとして、猟銃所持の許可を取り消されたハンターが処分の取り消しを求めた控訴審で、10月に敗訴したことを受けた対応で、民間任せの駆除のあり方に一石を投じる狙いもある。〉

 10月の控訴審判決については、私の知り合いのハンターからも「ありえない判決」「こんなんじゃ、今後、駆除なんてできない」という怒りの声が届いていたが、猟友会による駆除拒否という動きに発展するとは思いもよらなかった。

 同時に北海道猟友会砂川支部奈井江部会で部会長を務めるハンターの山岸辰人(72)のことを思い出した。今年5月、山岸が率いる奈井江部会は、奈井江町からのヒグマなどの鳥獣被害に対応するための実施隊への参加要請を辞退し、全国的に大きな話題となった。(全2回の1回目/後編に続く)

トレイルカメラに映った親子熊(提供 南知床・ヒグマ情報センター)

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怒りの声が渦巻く道内

 山岸らがヒグマ駆除を辞退した理由は、以下の3点に要約できる。

(1)下手をすると命を落とすリスクもあるヒグマ駆除の日当が8500円(発砲した場合1800円を加給)では安すぎる
 

(2)奈井江町側がヒグマ駆除の実態をまったく把握しないまま一方的に猟友会に下請けさせようとするのは疑問
 

(3)奈井江町側にこうした現状を抜本的に見直そうとする姿勢が見られない

 当時のインタビューでは「下世話な表現ですが、ジジイを舐めているな、と思います」と話し、この人がこういう強い言葉を使うのか、と驚いたものだった。

 その山岸からは10月の控訴審判決が出た時点でこんなLINEが送られてきていた。

〈面白くなりそうです。道内(の猟友会)で怒りの渦が巻いてます〉

〈あまりにも理不尽な判決には、猟師として意思表示をすべきと思います〉