石破茂首相が今月、ペルーの首都リマで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議と、ブラジル・リオデジャネイロでのG20(主要20カ国・地域)首脳会議に出席した。その際、「石破首相の立ち居振る舞いが悪い」とSNSで大きな話題になった。
具体的には、石破首相が首脳会議の際、近づいた各国首脳に対して座ったまま挨拶したり、集合写真を欠席したりしたことがやり玉に挙げられた。しかし、複数の現・元職の官僚たちに話を聞いてみると、石破氏本人の責任ではないという声が圧倒的だった。
「石破氏はかわいそうだ」と外務省元幹部
そもそも、石破氏の外交政策をめぐっては、9月の自民党総裁選の際、「アジア版NATO」や日米による「核の共有」を提言したことから、外務省や防衛省の関係者から「米国が応じるはずもない」「外交センスが足りない」「自民党で党内野党を10年続けて来た反動だ」といった指摘が出ていた。石破氏は2014年9月まで党幹事長を務めた後は、閣僚を務めたことはあったものの、党中枢から離れた存在を強いられてきたためだ。
外務省関係者の一人は「外務省には、外相OBの麻生太郎党最高顧問の影響力が色濃く残っている。幹部たちは麻生氏が怖くて、石破氏に政策立案で助言できなかっただろう」と語る。ただ、総選挙を終え、少なくとも現時点で自民党内は石破支持で結束しているという。石破氏が首相就任後、「アジア版NATO」や「核の共有」を封印したのも、権力の中枢に座ったことで「安定飛行」を狙っている証拠とも言える。
今回の「座ったままであいさつ」については、外務省関係者らは石破氏に同情的だ。元幹部は「APEC首脳会議には大勢の首脳が集まる。初参加の石破氏に声をかける首脳は多かっただろう。石破氏もその場その場で応対したわけで、座っている写真だけを切り取って批判するのはかわいそうだ」と語る。