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靴擦れを起こしやすい人にとって草履は最高

――着物を着るようになると体が楽なのか、疲れるのか、どうですか? 

長谷川 私は楽になりました。といっても、洋服もストンと着ればいいだけのワンピースが好きなので洋服も楽なんですけど、着物の楽さで言うと、私は草履ですね。靴を一日中履くより、草履を履いていたほうが全然、楽。締め付けないし蒸れないし。

――草履だと足の形も問わないわけですよね。

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長谷川 私、外反母趾なんですよ。どんな靴でも靴擦れを起こしてしまってたので、靴擦れを起こしやすい人にとって草履は最高です。

 

 あと、鼻緒が痛いイメージがあるかもしれませんが、浴衣の下駄と違って草履の場合は足袋を履きますから、擦れないです。鼻緒も、本来は足の指にがっつり入れて履くのではなく、挟むように履けば痛くないですし。

 ただ、今は更年期で暑くなりやすいから、そこは着物だと大変かな。

――すぐ脱げないから?

長谷川 そうそう。洋服は暑かったら脱げるけど、着物はそうはいかないので。

 帯の他にも伊達締めがあったり、私はおはしょりも作っているので、お腹周りが厚いんですよ。だから、逆に言えばお腹が冷えないですし、体幹が鍛えられている感じもあります。

――トイレはどうですか。和服だから和式のほうが楽ってことはありますか。

長谷川 いや、和式は大変ですよね。足腰の問題で、年をとったらやっぱり洋式が楽です。和服だから和式がいい、ってわけじゃないですね。

 トイレは、着物よりオールインワン(つなぎ)とかワイドパンツの方が大変だと思います。あれ、裾を何とかして下に付かないようにしてやらないといけないからヒヤヒヤするじゃないですか。着物の場合は1枚ずつめくっていくのがちょっと面倒、ってくらいです。

10年ぶりの帰国で感じた「日本という国」

――長谷川さんは今年10年ぶりに帰国されたそうですが、日本と海外で着物への反応に差がありますか。

長谷川 海外よりも日本の方が、人から見られますね。タイにいるときも、タイ人より、タイに住んでいる日本人が見てくるんです。上から下まで、「この人、何?」みたいな感じで。

 日本という国は、すごく他人に興味があるというか、文句を言いたくてしょうがない人たちが多いんだなって改めて思いました。

 

写真=石川啓次/文藝春秋

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