自分の意思とは関係なく、声を発したり、身体を動かしたりしてしまうトゥレット症候群であるへちさん。

 インフルエンサーとして活動する彼女に、「チック症の美少女」として動画が拡散した経緯、日常生活や恋愛で感じる壁、トゥレット症候群への認知などについて、話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

インフルエンサーとして活動する「トゥレット症候群」のへちさん ©三宅史郎/文藝春秋

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治療中の動画が「チック症の美少女」と言われて拡散

――トゥレット治療用のマウスピースを試している姿を捉えた動画が、「チック症の美少女」として拡散していったとのことですが、その動画はどのような経緯で撮られたのでしょう。

へちさん(以下、へち) アメリカで治療してくれた先生は、いろんな人種のトゥレット症の人たちにマウスピースを試している動画を撮っていて、それを自分のYouTubeのチャンネルに出していたんですよ。で、マウスピース治療をした初のアジア人が、私だったんです。先生から「医療のためにも、あなたの映像を出していい?」って聞かれて「医療のためなら」ってOKして。そうしたら、その動画がロリ扱いで転載されていっちゃったみたいなんですね。

アメリカで治療しているときのようす。思わぬ形で動画が拡散してしまった(画像=へちさんのYouTubeチャンネルより)

――動画の拡散を知ったきっかけは。

へち 友達から教えてもらったんです。「載ってるよ」って。動画自体は、高校の頃からアメリカの先生のYouTubeチャンネルにあったんですよ。で、高校を卒業して1年か2年の間に転載されていって。

 ほかにも近所の仲いい子とか、いろんな方面から「なんか、出回ってるよ」「見たよ」とか言われて「あああ~」って感じでした。

――ロリータ動画的な扱いで拡散してしまうのは、ちょっとアレですよね。

へち 当時は病みました(笑)。でも、後になってTikTokとかSNSで動画配信を始めたので、良くも悪くもアレで私を知ってもらうきっかけにはなりました。

 

マウスピース治療のメリット・デメリット

――アメリカでのマウスピース治療ですが、装着したら症状が止まったわけですよね。治療法として、もっと普及してもおかしくなさそうですけど。

へち ちょっとお金がかかりすぎるというのがあるんですよ。マウスピース自体が60万円ぐらいなんですけど、3、4ヶ月で擦り減ってくるので修理に出さなきゃいけなくて。その修理の費用も掛かるし、保険の利かないアメリカってなると大変なんですよね。あと、日本にいる場合は、アメリカまでの渡航費もバカにならないので。誰でも受けられる治療とは言い難いですね。