自分の意思とは関係なく、声を発したり、身体を動かしたりしてしまうトゥレット症候群であるへちさん。

 インフルエンサーとして活動する彼女に、幼い頃の症状、中学で経験した周囲の無理解、マウスピースを用いたアメリカでの治療などについて、話を聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く

インフルエンサーとして活動する「トゥレット症候群」のへちさん ©三宅史郎/文藝春秋

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悩まされた合併症の強迫性障害

――トゥレット症候群とは、どういった疾患になるのでしょうか。

へちさん(以下、へち) 先天性の病気になりまして、自分の意図なしで体が動いてしまったりとか、声が出てしまったりするんです。それに伴って、うつ病やADHDなどが合併症として付いてくる病気ですね。

――チック症とは違う。

へち チック症は、運動か音声かどちらかが症状として出る。で、運動チックと音声チックの両方が1年以上続いた場合、トゥレット症候群という診断になって。トゥレット症候群になると、いま言ったような合併症の発症が多くなるんです。

――症状は、運動と音声のどちらかに偏って生じるのでしょうか?

へち 幼少期とかに首を振るクセがあるとか、多めに鼻をすするクセがあるといった程度のチック症状の人もいますし。どちらが多いとは言えないんですけど、運動か音声のいずれかが症状として出て、一定期間で消える人が多いと思います。

インフルエンサーとして活動する「トゥレット症候群」のへちさん ©三宅史郎/文藝春秋

――トゥレット症候群は合併症も生じるとのことですが、へちさんはどんな合併症が。

へち 強迫性障害です。私はチック症状も出るけど、昔から合併症の強迫性障害に悩まされてきていまして。それが一番大変ですね。

――強迫性障害。

へち たとえば、「この道をどうしても右に行かねばならない」とか、「右に行かなければ、なにかすごい悪いことが起こるんじゃないか」みたいな。まったく行く必要がないのに「行かねば!」となっちゃう。ほかには、手を洗わなくてもいいのに「洗わねば!」みたいな。そういうのが強迫性障害です。

 いつから強迫性障害が始まったかは自覚してないんですけど、小学生の頃にはもうありました。チック症は、両親が5歳の頃の私を見て「アレ?」となったそうです。

幼少期のへちさん(写真=本人提供)

「この子はチック症かもしれない」両親が気づいたきっかけ

――わかるものなのですね。

へち 両親は、医療系の仕事に就いているのでピンときたんです。両足でピョンピョン跳ぶ動作をずっと繰り返してたらしくて。「もしかしたら、この子はチック症かもしれないね」と言ってたのが、だんだんと確信になっていって。