――TikTokを始めて、良かったことは多いですか。
へち 最初はダンス動画しか出してなかったんですけど、顔が知られてきたら、啓発のためにもトゥレットのことを公表しようと思ってたんです。TikTokは拡散力があるから、だんだんと認知されるようになってきて。TikTokって、障害や病気に関心のない方もたくさん見てると思うんですよ。だから、そういう人たちにトゥレットに関する動画が届くのは、いいことなんじゃないですかね。
――反応もいいですか。
へち 始めて1年くらいして、トゥレットのことを公表して。そうしたら、拡散された動画のファンだって人がけっこう多くて。「あの動画のファンって?」と思いましたけど、うれしいですよね。
カッターで壁を切り、携帯を真っ二つに割ったことも…
――体調不良から脱したとのことですが、トゥレット症候群の症状のほうは。
へち いまもあります。最近困ったのが、着物を着る機会があったんですよね。で、後ろに帯が大きく付いてるじゃないですか。でも、背中の上のほうを触りたくなる運動チックがあって。帯が邪魔になって触れないので「ウワーッ!」となっちゃって。
――カッターやハサミを持っているときに症状が出てしまうと、危ないことも。
へち ケガしちゃう方もいます。刃物で切るだけでなく、なにかをガンガン叩いちゃって手をケガしたり、自分で歯を抜いちゃったり。
でも、それは合併する強迫性障害による場合もあって。強迫性障害でケガをすることって、けっこうあるんですよ。私も、どうしてもカッターで壁が切りたくなっちゃうという時期があって。チックといえばチックなんだろうけど、強迫性症状からきてるのを強く感じました。
――壁を切ったりすると、スッキリするのですか。
へち あんまり、しないんですよね。どっちかというと「あっ、ヤバ」ぐらいの(笑)。「壁切っちゃった。賃貸だったのに」みたいな(笑)。
正直、どうしていいかわからないところもあるんです。昔、ガラケーだった時代にケータイを真っ二つに割っちゃったことがあって。そのときは「あっ、割れちゃった」と思ったけど、どうしようもないというか、割りたくて割ったわけじゃないし。「どうしたもんかねえ」って。
最近は無意識に「キャー」「ニャー」と言ってしまう
――「背中の上のほうを触りたくなる」運動チックがあるとのことですが、意識して抑えることはできるものなのでしょうか。
へち ちっちゃな動きをして、逃がす。たとえば足に逃がすとか。「あ、くるな」となったら、足を上げたりして。でも、背中を触るぐらいのチックだったら、白い目で見られることもないんで。
一応、抑えることはできるんですよ。「絶対に出しちゃダメ」って思うと、チックって抑えられるんです。中学、高校では、それを1日頑張ってやってたという感じで。ただ、どっと疲れちゃうんです。