1ページ目から読む
3/3ページ目

 彼らの証言によれば、収入の70~80%を国家に上納しているという。そのほかにも、「政治的名節」と呼ばれる党創建記念日などや、災害復興支援など特別な支出が発生した際には、別途「忠誠資金」の支払いを求められるという。

 姜氏がインタビューした労働者のなかには、2年間でためた金が、わずか50ドル(約7400円)という人もいた。姜氏は「それでも、北朝鮮にいてもカネになる仕事がない。彼らは賄賂を払ってでも、海外労働の仕事に就きたがる」と語る。 

韓国東亜大学の姜東完教授=本人提供

 また、ロシアに派遣される北朝鮮労働者はしばしば、脱北を試みる。米韓関係筋によれば、ロシア政府はこれまで、北朝鮮当局がロシア国内で脱北者を逮捕・送還する行為を黙認すると同時に、脱北者が国連難民高等弁務官事務所と接触して保護を受けるまでの間、ロシア内で居留することも認めてきた。

ADVERTISEMENT

 ただ、ロシアが最近、ウクライナ侵攻のための弾薬支援などを通じ、北朝鮮と急速に接近したため、ロシア当局による脱北者の取り締まりも厳しくなっているという。

北朝鮮の体制は限界を迎えている

 朝鮮中央通信によれば、金正恩総書記は11月18日、訪朝したロシアのコズロフ天然資源環境相と平壌で会談した。コズロフ氏はロ朝両政府による「貿易・経済・科学技術協力」協議のロシア側代表団を率いた。金総書記は両国の貿易活性化の必要性を強調しており、北朝鮮労働者のロシア派遣拡大について話し合った可能性がある。

 姜氏は撮影した約3000枚の写真を通じ、「金正恩総書記は北朝鮮市民の支持を得ていない」と感じるという。姜氏は「暴動やデモが起きているわけではないが、市場に取り締まりに来た警察や、自宅の捜索に来た国家保衛省の役人などに文句を言う市民が増えていると聞いている」と語る。

 いろいろな生活物資が不足し、市民の権利を奪う北朝鮮の今の体制について、「限界を迎えている」と指摘した。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。