確かに大山の巨人移籍への機運は醸成されつつあった。阪神の藤川球児監督も、大山がFA権を行使した際に「彼らが選択する権利。裏切りみたいな印象は違う。それを変えていきたい」と、時代が変わったことを強調しながら一定の理解を示していた。
獲得を狙う巨人側も意欲を隠さず、阿部慎之助監督が「うちに来て、世紀の大FAの先駆者になってほしい」とラブコール。さらに坂本勇人内野手が「大山くんはいい子なので来てほしいなと思います」と言えば、岡本和真内野手も「同じ右打者として高め合いたいなと思います。チーム内で競い合いたい」と異例の言及。
山口寿一オーナーまでもが「(巨人は)最も歴史のある球団。責任が大きいと自らが思っているし、愛も深いと思っています」とアピールするなど、まさにチームとフロント一体となって禁断のFAへの障害を取り除こうと躍起になっていた。
阪神が「監督手形」を切ったのではという憶測も
阪神はレジェンド鳥谷敬らに並ぶ球団史上最長の5年総額17億円を提示したが、巨人はそれをはるかに上回る6年総額24億円超を提示。その渦中、大山は11月25日に開催された阪神球団の納会を欠席した。数々の状況証拠が巨人移籍を示唆していたのだが……。
「巨人は引退後についても、これまでFA移籍選手と同じに、コーチなどで残すことを保証していたようです。それでも、大山は巨人移籍に踏み切れなかった。藤川監督が理解は示しても、巨人への移籍となれば阪神ファンの反発は容易に想像できます。特に甲子園でのプレーにはとてつもないプレッシャーがかかっていたでしょう。とはいえ、残留を決断するには何か決定的な『条件』があったのではないかと言われています」
在京球団の編成担当はこう指摘しつつ、「監督手形」が切られたのではないかという。つまり引退後の、監督の座を約束したというのだ。
阪神は2014年オフ、海外FA権を行使した鳥谷がメジャー挑戦か残留かで揺れていた時期に、将来的な監督就任を約束したとされる。