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 学校の背の順だと小さいほうだった僕も、この中では頭ひとつ抜きん出てしまっていた。それは同時に今がもう“遅すぎる”タイミングであることを告げられているようでもあった。小学生たちが可能性のかたまりに見え、自分は受験戦争などというものに時間を費やしている間に、その可能性を減らし続けていたのだということに気づく。戻れない時間の重みと、削ってしまった可能性の大きさを嫌でも自覚させられる。僕は、自分が大人になってしまっていることに絶望した。

 ただ、いつも見ていたジャニーズJr.の番組である『Ya-Ya-yah』のスタジオの中に自分がいるという状況に加え、さらにはジュニアのレッスン風景に潜入したりする番組で見たことのあった振り付け師・サンチェさんの登場は、気を引き締めるには充分だった。

 お手本として登場した当時ジュニアの千賀健永と山本亮太のダンスが目の前で見られることに高揚しながらも、課題曲だったタッキー&翼の『夢物語』の振り付けを覚えていく。

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“その人”との出会い

 ある程度、ダンスの振り付けが終わった頃だろうか、“その人”は現れた。

 近づいてくるにつれ、空気が変わっていくのを感じる。200人ほどが詰め込まれたスタジオの少年たちの波が、サーッと形を変えていく。

 皆、その人に気づきながらも、意識をしないように踊っている。僕自身もそうだった。過度のアピールは嫌われるのではと思いつつ、近づいてくるとどうしても動きに力が入ってしまう。

「掃除のおじさんだと思っていたらジャニーさんだった」「不合格だったから名札を返そうと思って、立っていたおじさんに話しかけたら合格を告げられた」といった類のエピソードが当時、既にテレビなどで多く話されていたので、きっと少年たちも親にそう教え込まれていたのだろう。挨拶や紹介こそなかったが、その会場に入ってきた人物が、ジャニー喜多川であることに、皆が気づいていたと思う。

ジャニー喜多川

 手元には紙とペンがあり、どうやら胸の番号を記入しているようだった。手元は動かず、僕の横を通り過ぎていく。僕と同じくらいの、大人としては小柄な身長は、少年たちの波の中に身を隠すのにはちょうどよかったのかもしれない。どこにいるのか、何を見ているのかは気にはなったが、気づくとそのまま姿が見えなくなってしまっていた。