学校は不登校、今は大阪・ミナミの観光スポット「グリ下」界隈で、売春やメイドカフェのウェイターとして働く17歳の洋子(仮名)。彼女の取材を進めていくうちに、グリ下をたむろする若者たちの間で「違法な薬物取引」が行われていることが明らかに。本来、処方箋がなければ手に入らない、睡眠導入剤や向精神薬をどうやって手に入れるのか? その実態を、フリーライターの花田庚彦氏の新刊『大阪 裏の歩き方』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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グリ下キッズのクスリ事情
ひっかけ橋近辺では一時期、市販の風邪薬などを過剰に摂取する、オーバードーズが問題になった。取材時に界隈のドラッグストアを見てみると、万引き防止のためだろうか、オーバードーズに最適なクスリは店頭には置かれず、代わりに空き箱が並んでいた。
ご多分に漏れず、洋子も周りにつられて、クスリに手を出していた。本来なら処方箋がなければ手に入らない睡眠導入剤なども、簡単に入手できると洋子は言う。
「保険証がないから医者には行けないけど、Xで知り合った人から定期的に睡眠導入剤や向精神薬を買ってるわ」
「不眠症なの?」と、かまをかけて聞いてみると、正直な意見を聞けた。
「いや、夜は普通に眠れるんやけど、昼間に3錠くらい飲んでフラフラするのが気持ちいいんや。処方箋のクスリ飲んだら、もう市販薬には手は出せへんし、戻れない」
また、「フリマアプリで取引している子もぎょうさんおるで」とのこと。
やり口はこうだ。まず、SNSのXでクスリを売ってくれる人を見つける。相手はフリマアプリで、クスリとは別の商品を「○○さん(買い手のニックネーム)専用」で出品する。クスリが欲しい○○さんはそれを落札。出品者がクスリを発送して取引は完了だ。これなら、フリマアプリのやりとり上は、クスリとは別の商品を買ったようにしか見えない。
もっとも、警察が捜査すれば、こんな取引はすぐバレる。XのDMが警察に確認されれば、一発で補導される案件であろう。そこまでやるほど警察が暇ではないだけで、いつバレてもおかしくはない。やり口が世間に知られるようになったり、社会的な問題になれば、すぐに警察は取り締まりを始めるだろう。