軍人が国会に投入され…
大統領の談話が終わると、国会が位置するソウル・汝矣島の上空には軍用ヘリが出動し、280人以上の戒厳軍が国会に投入された。国会前では市民が駆けつけて軍人が乗っているバスを通過させないよう阻止するといったすさまじい光景が広がり、興奮した市民たちは次第に「尹錫悦を逮捕せよ」と叫び始めた。
前出の戒厳法には「国会が戒厳の解除を要求した場合には遅滞なく解除して公告しなければならない」と明記されているが、解除要求に必要な条件は「在籍議員過半数の同意」だ。同戒厳法に明示された「国会の非常戒厳令解除要求案」を通すため、国会議員たちは国会入りを試みた。
議員たちと秘書らが国会の出入り口の前で武装軍人たちともみ合いをしているうちに、禹元植国会議長は塀を越えて国会の敷地内に入った。国会本会議場に議員たちが続々と集まる中、武装した軍人たちも窓を割って国会に進入し、廊下を巡回した。一部では「この時、軍人たちが禹国会議長と『民主党』の李在明代表、与党『国民の力』の韓東勲代表を逮捕しようとした」という情報もあがった。
幸い、大きくけが人が出ることもなく、定数300のうち190の国会議員が国会に集結し、戒厳令解除要求案を上程。4日午前1時頃に190人全員の賛成によって国会を通過した。ちなみに、「実弾は軍人たちに与えられていない」と伝えられている。
6時間で終わりを迎えた「戒厳ショック」
明け方の4時27分頃、尹大統領は生放送を通じて「国会の戒厳解除要求があり、戒厳事務に投入された軍を撤収させた。直ちに国務会議を通じて国会の要求を受け入れ戒厳を解除する」と戒厳解除の意思を明らかにした。続いて午前5時頃、国務会議の議決を通じて戒厳解除を宣言した。
真夜中に起きたこの「戒厳ショック」は6時間で終わりを迎え、尹大統領の命運を左右する「弾劾」への動きが始まった。まず4日、禹国会議長を除く野党議員191人全員の同意で尹大統領に対する「弾劾案」が国会で発議された。弾劾案の主な理由としては、「戒厳令の宣布による憲法および法律違反」「刑法上の内乱未遂容疑」と指摘。
さらに野党は、この弾劾案とは別に、内乱未遂罪で尹大統領に対する刑事告訴とともに、「常設特別検事制度」を導入して捜査していく方針も決めた。