日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)の第6話には、やられた。鉄平(神木隆之介)が朝子(杉咲花)に思いを打ち明けた、ただそれだけなのに。
日曜劇場という老若男女幅広い層が観ている枠で、おそらく全視聴者が第6話ラストシーンの鉄平と朝子を祝福したのではないだろうか。このカタルシスまで到達させる野木亜紀子の脚本力、塚原あゆ子の演出力もさることながら、とにかく神木隆之介と杉咲花の芝居が神懸かっていた。その瞬間、2人の間にはフィクションという線引きを飛び越えてきそうな実存感があった。
1950~60年代と現代を行き来しながら、外勤職員として長崎県・端島のために奔走する鉄平と、現代を厭世的に生きるホストの玲央を自在に演じ分ける神木の熟達に唸る。
明るい未来を信じるまっすぐな若者と、希望なき「ドブ」の中に生きる若者。双方の「目の光」までも思い通りに調整できてしまうのだから驚く。鉄平と玲央の両極端さは、キャリア29年の神木が演じてきた役の振り幅の広さと経験値の成せる技だろう。
端島で生きる食堂の看板娘にしか見えない杉咲花の佇まいに痺れる。台詞なしでも、表情だけで何でも語ってしまう。杉咲の芝居勘は「身体に染み込んでいる」という表現が相応しく、感情という名のスネアドラムを体の深部で低く震わせたり、突然スタタン! と鳴らしたり、思いのままにコントロールしている。
人懐っこくも心根は気高い朝子も、映画『市子』(2023年)で演じた哀哭を身体に閉じ込めたような市子も、『アンメット ある脳外科医の日記』(2024年/関西テレビ・フジテレビ)で見せた、心中で希望と諦観が拮抗しているミヤビも、ひとりとして同じ人が演じているように見えない。
7度目の共演で、「神様」「花様」と呼び合う仲
本作の制作発表の際、メインキャストに神木隆之介と杉咲花がいるとあらば、間違いないという安心感があった。2人が並べばとにかく座りがいい。しかしこの2人は、その安心感に甘んじないのだ。6話のあのシーンは、たしかに誰も見たことのない神木隆之介と杉咲花であった。
常に進化し続けるこのスーパー俳優2人は『海に眠るダイヤモンド』を含めて7作品も共演しており、杉咲にとって神木は最多共演者となる。共演が多いからこそ互いへの信頼感も大きいのだろう。それが2人の「座りの良さ」につながるのかもしれない。ちなみにこの盟友どうし、「神様」「花様」と呼び合う仲らしい。