独自の路線で注目を集め、活動30年を超えたドラァグクイーンのエスムラルダさん(52)。一橋大学出身と高学歴で、多ジャンルにわたるライターという顔をもち、商業ミュージカルも手掛ける脚本家でもある。さらに2018年にはドラァグクイーン・ディーヴァ・ユニット「八方不美人」のメンバーとして歌手デビューを飾り、現在も華麗な活躍が続いている。
そんな多才なエスムラルダさんに3回にわたってお話をうかがった。第3回は「ドラァグクイーン界の仏」あるいは「ドラァグクイーン界の良心」の異名をとるエスムラルダさんのしなやかな生き様の秘訣に迫る。(全3回の3回目/最初から読む)
歳を重ねて良かったことは「いっぱいある!」
――「八方不美人」もそうですが、エスムさんの活動を見ていると、ご自身より若い方と組むことが多くて、それがすごくいい関係に見えます。そこでおうかがいしたいんですが、歳を重ねること、“エイジング”についてはどうお感じですか?
エスムラルダ 今のところ、歳を重ねて「良かった」と思うことのほうが多いですね。昔より「こうしなきゃ」「こうならなきゃ」という思い込みが減って自由に生きられてる気がするし、嫌なことがあっても1時間後には忘れてるし……まあ、いいことも忘れちゃうんだけど!
若い頃は自分の容姿があまり好きじゃなかったけど、年齢を重ねてくると「今さら見た目がどうのこうのいっても仕方ないか」「この容姿だからこそできたこともあるし!」って思えるようになった。ホラー系のショーでお客さんに喜んでもらえたのも、この顔のおかげだしって(笑)。
――エイジングをプラスに捉える。エスムさんが「ドラァグクイーン界の仏」とも呼ばれているのも、その辺りと関係がありそうです。
エスムラルダ 若い頃の私は、コンプレックスの塊だったの。たとえばブルボンヌさんは頭の回転が早いし、恋愛にも積極的で、自由に生きているように見えた。私はなかなか枠からはみ出せないタイプで、自分が持ってないものを彼女が全部持っていると思って、嫉妬してたんです。でも30代半ば位からかな。やっと「人は人、自分は自分」って思えるようになった。
「八方不美人」のあとの2人(ドリアン・ロロブリジーダ、ちあきホイみ)とはひとまわりぐらい違うけど、それがよかったなと思う。ドリアンは人気があるし、ホイみは歌が本当に上手いから、同世代だったらすごくコンプレックスを感じたんじゃないかしら。
――自分がラクになると、周りとの関係も変わってきますね。
エスムラルダ 人をいたずらにうらやんだり、他人に腹を立てたりすることは格段に減りました。