能登半島の皆さんを勇気づけたい……

――晩年、利家は後を継ぐ利長に対して、「お前は自分の信じた道を行くがいい」という、印象的な言葉をかけます。

 

安部 それは利家が利長の可能性を認めた瞬間じゃないでしょうか。利長の初陣の頃は、「俺に従ってないと、お前は明日にも討ち死にしてしまうぞ」といった感じで、明日でも生きるか死ぬかという時代ですからね。だけど利長が好きなように、自分の信じた道を進んでも、前田家を託せるというのはいちばんの評価ですよね。

『等伯』を書いていたころから、舞台になっている能登半島や石川県、富山県の人情や人のあり方には、ずっとシンパシーを感じてきましたが、やはり北陸の風土に育てられた気質というものもそこにはあると思います。厳しい自然環境で生きていかなくてはいけないし、利家と利長の時代にも、能登は大地震に見舞われ、とても大きな被害を受けています。それでも誠実に、諦めずに努力を続ける――ずっと粘り強く自分の道を切り拓いていく彼らの姿は、読者の皆さんをきっと勇気づけてくれるはずです。

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 実は、2025年の元日から「北國新聞」で、本作の続きである「みやびの楯」編の連載がはじまります。地震や大雨の被害にあった能登半島を励ますためにもと打診され、お引き受けすることになりました。「みやびの楯」編では、関ヶ原の戦いに遭遇する利長、そして大坂の陣に遭遇する三代目の利常が主人公です。こちらにも是非、ご注目をいただけたら嬉しいです。

INFORMATION

※安部龍太郎さんの最新長編『銀嶺のかなた』の刊行を記念したサイン会は、12月15日(日)に作品の舞台となった金沢、富山の2か所で開催されます。

詳しくは⇒https://books.bunshun.jp/articles/-/9472

銀嶺のかなた(一) 利家と利長

銀嶺のかなた(一) 利家と利長

安部 龍太郎

文藝春秋

2024年12月11日 発売

銀嶺のかなた(二) 新しい国

銀嶺のかなた(二) 新しい国

安部 龍太郎

文藝春秋

2024年12月11日 発売