44年ぶりの「非常戒厳」宣言に揺れる韓国。いまの韓国のリアルな状況とは? 韓国在住のライター・東山サリー氏が現地の様子を寄稿した。

12月6日、デモに参加する人々 筆者撮影

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たった6時間で解除された非常戒厳

 ユン・ソンニョル大統領が突如として発表した非常戒厳宣言により、いま、韓国は揺れに揺れています。日ごとに変わってゆく状況を、現地に暮らす一人として、そわそわとした気持ちで過ごしています。

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 私が暮らすのは韓国の首都・ソウル。平日は現地の企業で会社員をしているのですが、現在もいつも通りオフィスに出勤していますし、友達とも遊びます。ソウルに暮らす人々みんながみんなデモに参加しているわけではありませんし、以前と変わらぬ日常を送れています。

寒い中、連日多くの人がデモに参加しています。「民主主義を守らなければいけない」とスピーチをしている大学生も 筆者撮影

「ソウル旅行を取りやめにするべきか」と悩まれている方も多いと思います。まず、景福宮(キョンボックン)の前にある光化門エリアや、汝矣島(ヨイド)にある国会議事堂周辺は避けることをおすすめします。聖水(ソンス)漢南洞(ハンナムドン)弘大(ホンデ)蚕室(チャムシル)など観光スポットとして人気のエリアをはじめ、デモが開催されている一部の場所以外はいつも通りの時間が流れています。とはいえ、いつ、どのように状況が変化するのかはまったくの未知数です。駐韓日本大使館の公式SNSやホームページには最新情報が掲載されるので、行政の公式情報をチェックしておくとよいかと思います。

ソウル市街の風景 ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 非常戒厳が出たのは12月3日の深夜22時過ぎのことでした。あまりの突然の発表に、大荒れになるSNSのタイムラインや、各局がニュースのライブ配信をするYouTubeを一晩中食い入るように見ていました。

戒厳令を宣言する尹大統領 ©時事通信社

 はじめは、「来月のライブが中止になったらどうしてくれるんだ!」などと、なんとも呑気な怒りを覚えるほどだったのですが、「非常戒厳」の内容を確認し、「夜間11時以降の外出は控えるように」「出版・言論の統制」など、まるで戦時中のような規制が行われることを知り背筋がぞっとしたのです。さらには、国会前に停められた戦車や国会に軍人が入っていく映像が拡散され、その様子は現実とは思えず、ただただ驚き、ドラマを観ているようでした。