学園ドラマはなぜ減った?
窪田正孝演じる東新宿高校定時制に務める理科教師・藤竹叶と生徒たちによる、科学部での活動を通した成長を描く物語『宙わたる教室』から目が離せない。
まず、近年減ってしまった学園ドラマをやってくれてありがとう! 学級形成のためは大量に若い俳優を用意する必要があり、普通高校の1クラス40名程度の“大箱”となるとコスパが悪く、制作に二の足を踏むジャンルとなってしまった学園ドラマ。
そんななか、少人数制で生徒と教師が密につながる定時制高校を題材にするというのは、制作陣にとっても、目の肥えた視聴者にとっても良い結果だったと思います。
定時制には、そこにしかないドラマがたくさん存在します。本作は、数話をかけて問題を抱える生徒たちの背景を丁寧に描くところから始まります。まずはストーリーの起点となる柳田岳人(小林虎之介)。読み書きが苦手なことを馬鹿にされ、中学から不登校になり、不良の道へ。負のスパイラルから抜け出すため20歳で定時制高校に通い始めます。ある時、藤竹の指摘をきっかけに、自分が発達性ディスレクシア(読み書き障害)だと知ることに。
思考力も暗記力も計算力もあるのに、文字を認識する機能の問題のせいで、学校のテストで低い点しかとれず、「学力不振」に悩み続ける人たちがいる。その事実を多くの視聴者が知るきっかけにもなったことでしょう。
藤竹は岳人の数学の答案から、成果が出ないのは何か合理的な理由があるのではないかと推理。これはまさに研究者の態度です。小さな違和感をないがしろにせず、生徒の抱える課題を見逃さない姿勢はすばらしすぎます。
学園ドラマの「王道パターン」当てはまる部分、外した部分
ほかに、母親がフィリピン人で不法滞在だったため、子供時代に学校へ通えなかった40代の越川アンジェラ(ガウ)。起立時にめまいなどが起こる起立性調節障害であるため、保健室登校を続けている名取佳純(伊東蒼)。最年長は生家が貧しかったことから中学を出てすぐ集団就職した70代の元町工場経営者・長嶺省造(イッセー尾形)。彼らが抱える背景についても1話ずつ触れていきます。