藤竹のすすめで4人は科学部のメンバーとなり、火星の再現実験を行うことに。構成としては、生徒の問題を教師が解決しながら仲良くなり、仲間が一人ずつ増えていくという学園ドラマの王道パターン。でも、それだけではありません。本作を観ていると、ほかの学園ドラマと違う感動ポイントに出くわすことになります。それは「学ぶ」ことの大切さを伝える意思が根底にしっかりあること。
学園ドラマは友情や恋愛、生徒が抱える問題などが焦点になりがちですが、本来、学校を舞台に伝える作品で一番大事なことは、「学び」の面白さに気づかせる点だと思うのです。
高校は社会で生きていくために必要となる能力を共通して身に付けることのできる教育機関。でも、さまざまな事情で進学が叶わなかった人たちがいる。そんな人たちが、学びたいと思って再び学校という場所に集っている。社会性とか協調性とか忍耐力とか、“ジャパニーズサラリーマン”に必要な素養を身につけるためではなく、“勉強したい”という意思で、生徒たちはここにいるんです。
情報化が進む今は、教えられたこと以上に、自ら学び、吸収できる人だけが生き残れる時代だと思います。だからこそ、この意欲が大事。学ぶ喜びに目覚めた生徒たちは、科学部を通して、新しい世界を見出す「好奇心」、物事の本質を見抜き、自ら考え抜く「思考力」、形あるものを生み出し、失敗しても結果を出す「実現力」を取得していきます。
学園ドラマ=“教師のドラマ”である
学園ドラマは、たいてい教師の物語でもあります。その主人公は熱血であればあるほど視聴者を魅了するものですが、本作は熱血な先生が生徒を変えるような既存の学園ドラマではありません。藤竹先生は生徒を科学部に熱心に勧誘するのではなく、あくまで科学や実験という自分のテリトリーで生徒を導き、仲間に引き入れていくスタンスの優しいキャラクターです。
それは窪田正孝の徹底した役づくりの賜物でもあります。あえて熱っぽくない演じ方なのは、先生である前に研究者として生徒と接しているから。だからといってクールというわけでもなく、もちろん熱血でもない。わかりやすくないというのはむしろ一番難しい表現なわけですが、このバランス感が必要とされる演技を普通にこなす窪田正孝、すごすぎでは!